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自己破産の手続きは、裁判所による破産手続開始決定から始まります。
この決定は、債務者の財産管理や権利に大きな影響を与える重要な判断となります。
ここでは、破産手続開始決定の意味や条件、効果について、分かりやすく解説していきます。
この記事を読んでわかること
破産手続開始決定は、裁判所が債務者の破産手続きを正式に開始する判断です。
この決定により、債務者の財産は破産管財人による管理下に置かれ、債権者による個別の取立てが禁止されるなど、様々な法的効果が発生します。
まずは、破産手続開始決定の基本的な意味や手続きの流れ、期間について詳しく見ていきましょう。
破産手続開始決定は、裁判所が債務者の破産手続きを開始することを正式に認める判断です。
この決定により、債務者の財産は破産財団として管理され、債権者への公平な配当が行われることになります。
かつては「破産宣告」と呼ばれていましたが、2005年の破産法改正により「破産手続開始決定」に名称が変更されました。
これは「宣告」という言葉が持つ懲戒的なイメージを払拭し、より中立的な表現にするためでした。
破産手続開始決定を得るまでには、いくつかの段階を経る必要があります。
まず、破産申立書と財産目録、債権者一覧表などの必要書類を裁判所に提出します。
同時に予納金も納付しなければなりません。
裁判所は提出された書類をもとに、破産手続開始の要件を満たしているかを審査します。
東京地方裁判所において弁護士が代理人として申し立てる場合、弁護士と裁判官との面接(即日面接)が行われ、同時廃止が相当かどうかの判断がなされます。
破産手続きの着手から破産手続開始決定までの期間は、早くて3か月程度です。
ただし、これは債務者の財産状況や債権者の数によって大きく変動する可能性があります。
期間に影響を与える要因としては、債務者の保有財産の規模、債権者の数、必要書類の準備状況などが挙げられます。
破産手続開始決定までの全体の流れを把握しておくと、自分が今どの段階にいるのか、これから何が起こるのかを見通せるため安心です。
一般的なスケジュールは以下のとおりです。
【ステップ1:弁護士・司法書士への相談・依頼】
借金問題の解決方法を相談し、自己破産が適切と判断されれば委任契約を締結します。委任契約と同時に、専門家から債権者に「受任通知」が送付されます。
【ステップ2:受任通知の発送(依頼後すぐ)】
受任通知が債権者に届くと、債権者は債務者本人への直接の取り立てや督促を停止する必要があります。
この時点から、督促の電話や郵便がストップします。
【ステップ3:必要書類の収集(3〜6か月)】
申立てに必要な書類を準備します。
家計収支表、源泉徴収票、預金通帳のコピー、保険証券などの書類を集めます。
この期間中に予納金・専門家の費用の積み立ても並行して行うことが多いです。
【ステップ4:破産手続の申立て】
書類が整ったら、住所地の地方裁判所に破産手続開始の申立書類を提出します。
同時に予納金も納付します。
【ステップ5:裁判所による審査】
裁判所が申立書類を審査します。
東京地方裁判所では、弁護士が代理人として申し立てる場合、申立て当日に「即日面接」が行われ、同時廃止か管財事件かの判断がなされます。
司法書士に依頼している場合は、申立後2週間程度の間に依頼人が裁判所に足を運び裁判官と面接します。
【ステップ6:破産手続開始決定】
要件を満たしていれば、申立てから1週間〜1か月程度で破産手続開始決定が下ります。
依頼から開始決定まで、トータルで早ければ3か月、書類収集に時間がかかる場合は半年程度を見込んでおくとよいでしょう。
破産手続開始決定には、いくつかの法定要件を満たす必要があります。決定が下りるのに必要な条件を整理すると、下記の3つとなります。
● 支払い不能または債務超過の状態であること
● 申立てが適法であること
● 破産障害事由がないこと
支払不能とは、債務者が継続的に債務を返済できない状態を指します。
一時的な資金不足ではなく、継続的に返済が困難な状況であることが要件となります。
一方、債務超過は、債務者の負債総額が資産総額を上回っている状態を意味します。
もっとも、個人の破産の場合は支払不能のみが要件となり、法人の場合は支払不能または債務超過のいずれかが要件となります。
破産手続開始の申立ては、申立権者による適法な申立てでなければなりません。
申立権者には、債務者本人のほか、債権者も含まれます。
また、破産しようとする人には、破産能力が必要です。
破産能力とは、破産開始決定を受けるための資格のことで、個人の場合は当然に認められますが、法人の場合は解散後の清算手続中の会社なども対象となります。
破産手続開始を妨げる障害事由には、いくつかのケースがあります。
もっとも一般的なのは予納金が納付されていない場合です。
予納金は破産手続きの費用を賄うためのものであり、その納付がない場合は手続きを開始できません。
また、破産制度の濫用にあたる場合も障害事由となります。
例えば、最初から破産するつもりで借金をした場合などが該当します。
すでに個人再生などの他の倒産処理手続が進行中の場合も、破産手続開始の障害となります。
この場合、基本的に破産以外の倒産処理手続が優先されることになります。
破産手続開始決定が出されると、債務者と債権者の双方にさまざまな法的効果が発生します。
これらの効果は、債務者の財産を保全し、債権者間の公平な配当を実現するために設けられています。
以下では、破産手続開始決定によって生じる主な効果について、具体的に解説していきます。
破産手続開始決定がなされると、裁判所は破産者に関する一定の事項を官報に掲載します。
官報とは国が発行する公的な機関紙であり、法律や政令の制定・改正、裁判に関する公告などが掲載されます。
破産手続開始決定は、破産法32条に基づき掲載されるものです。
掲載される主な内容は、破産手続開始決定の主文、破産管財人の氏名・名称、手続きに要する期間や期日などです。
また、破産財団に属する財産の所持者や破産者に対して債務を負担する者は、破産者に財産を交付したり弁済したりしてはならないことも明記されます。
さらに、簡易配当に対する異議申立ての期間も公示されます。
破産手続開始決定後は、債権者による個別の取立てが禁止されます。
これは破産法第100条に基づくもので、破産債権は破産手続によらなければ行使できないことが定められています。
禁止される行為には、督促、訴訟提起、差押えなどが含まれます。
ただし、一部の租税債権など財団債権については、例外的に個別の権利行使が認められる場合があります。
破産手続開始決定により、破産者の財産に関する管理処分権は破産管財人に移転します。
ただし、以下の自由財産については、破産者が管理処分権を保持します。
● 新たに取得した財産
● 差押禁止財産
● 99万円以下の現金
● 裁判所が認めた自由財産の拡張分
● 破産財団から放棄された財産
破産管財人は、破産財団の管理・換価・配当などの職務を行い、破産者は破産財団に属する財産を処分することができなくなります。
給与や賃金については、法的には差押可能な範囲でも破産財団に組み入れられないのが通例です。
破産者は、破産手続開始決定後、裁判所の許可なく居住地を離れることができません。
2泊以上の国内旅行や、1泊でも海外旅行をする場合には、裁判所の許可が必要です。
転居する場合も裁判所の許可が必要となりますが、仕事上の都合や家庭の事情による転居は、通常許可されます。海外渡航については、より厳格な審査が行われます。
なお、同時廃止事件の場合は、居住地制限が適用されません。
制限期間は破産手続が終了するまでとなります。
破産手続開始決定後、破産者宛ての郵便物は破産管財人に転送されます。
これは、破産財団の調査や債権者への公平な配当を確保するためです。
転送の対象となるのは、破産者個人宛ての手紙やはがきなどの信書などです。破産管財人は、これらの郵便物を開封して内容を確認する権限を有します。
転送期間は原則として破産手続が終了するまでですが、個人情報保護の観点から、明らかに私信とわかるものは破産者に転送されます。
破産手続開始決定により、一定の職業や資格が制限されます。
具体的には、弁護士、公認会計士、税理士、宅地建物取引士、警備員などの資格が制限対象となります。
株式会社の取締役などの会社役員についても、破産者は退任することになります。新規事業の開始も制限される場合があります。
制限期間は、免責許可決定の確定までです。通常は4か月から1年程度で、免責許可決定が確定すると復権し、これらの制限は解除されます。
破産手続開始決定が出されたあとは、事案によって「管財事件」または「同時廃止事件」のいずれかの方法で手続きが進められます。
また、個人の破産では、免責許可の申立てを行う必要があります。
ここでは、破産手続開始決定後の具体的な進め方について、管財事件と同時廃止の違いや、免責許可申立ての手続きなどを詳しく解説します。
管財事件は、債務者に一定以上の財産がある場合や、免責調査の必要がある場合に選択される手続きです。
東京地方裁判所の基準では、33万円以上の現金や20万円以上の換価対象資産がある場合などが該当します。
一方、同時廃止は債務者の財産が少なく、破産手続の費用も支出できない場合に適用されます。
手続きは管財事件が半年から1年程度かかるのに対し、同時廃止は3か月程度で終了します。
債務を免除してもらうための免責許可の申立ては、通常、破産手続開始の申立てと同時に行います。
なお、免責が不許可となるには、浪費や賭博による債務、詐欺的な行為、破産手続きへの非協力などがあります。
これらに該当すると、免責が認められない可能性があります。
免責を得るために必要な面談である「審尋」の期日では、裁判官から債務の原因や家計状況について質問を受けます。
免責決定までの期間は、同時廃止の場合で約3か月、管財事件の場合は破産手続終了後となります。
破産手続開始決定が出された後、手続きはどのように進んでいくのでしょうか。
「開始決定がゴール」と勘違いしがちですが、実際は開始決定から免責許可決定までさらに数か月程度の期間を要します。
ここでは、開始決定後の主な流れを解説します。
管財事件として手続きが進められる場合、破産管財人が破産者の財産を管理・換価し、債権者へ配当します。
【配当の流れ】
1. 破産管財人が破産者の財産を調査・特定
2. 換価可能な財産(不動産・自動車・有価証券など)を売却し、現金化
3. 債権者からの債権届出を受け付け、債権額を確定
4. 換価した財産を、債権額に応じて各債権者に公平に配当
配当が行われるためには、破産管財人が回収できる財産が一定額以上ある必要があります。財産が少額の場合は、配当が行われないまま手続きが終了するケースもあります。
なお、自己破産する個人の多くは配当に充てられる財産を保有していないため、配当が実施されるケースは限定的です。
破産手続は、最終的に「廃止決定」または「終結決定」によって終了します。
【廃止決定】
破産財団となる財産がなく、配当ができないと判断された場合に下される決定です。同時廃止事件の場合、破産手続開始決定と同時に廃止決定が出されます(同時廃止)。管財事件の場合でも、調査の結果、配当に回せる財産がないと判明すれば「異時廃止」として手続きが終了します。
【終結決定】
管財事件で配当が完了した場合に下される決定です。すべての債権者への配当手続きが終わると、裁判所が破産手続の終結を決定します。
廃止決定または終結決定により破産手続自体は終了しますが、これだけでは借金は消えません。借金を免除してもらうには、別途「免責許可決定」を得る必要があります。
破産手続の終了とは別に、免責許可決定が出されることで、ようやく借金の支払い義務から解放されます。
【免責許可決定までの流れ】
1. 破産手続の終了(廃止または終結)
2. 裁判官による免責審尋(面談)
3. 免責許可決定の言渡し
4. 官報への掲載(2回目)
5. 即時抗告期間(2週間)の経過
6. 免責許可決定の確定
免責許可決定が確定することで、税金などの非免責債権を除いて、すべての借金の支払い義務が法的に消滅します。同時に、自己破産による資格制限も解除され「復権」となります。
【期間の目安】
・同時廃止事件:開始決定から3〜4か月で免責確定
・少額管財事件:開始決定から4〜6か月で免責確定
・通常管財事件:開始決定から6か月〜1年で免責確定
免責許可決定が確定するまでは、引き続き資格制限などが続きますので、生活設計も含めて専門家とよく相談しながら進めることが大切です。
破産手続開始決定に関しては、破産手続開始決定の取消し、手続開始後の生活への影響について質問が寄せられます。
ここでは、これらの疑問に対する回答と、破産手続きを進める上での重要な注意点を解説します。
破産手続開始決定の取消しは、破産原因が存在しなかったことが判明した場合や、破産開始決定に重大な手続上の瑕疵(=欠陥)があった場合などに認められます。
なお、取消しの申立ては、破産手続開始決定の官報掲載から2週間以内に即時抗告という形で行う必要があります。
取消しが認められると、破産手続開始決定の効果が遡って消滅し、債務者の権利制限も解除されます。
もっとも、取消し後も債権債務関係は破産前の状態に戻るため、債務者は引き続き債務の支払義務を負うことになりますし、自己破産(債務者自身による破産申立て)の場合に取消しが裁判所に認められるのは相当少数と考えられます。
破産手続開始後も、基本的な日常生活は従来通り続けることができます。
ただし、新規の借入れや高額の契約は制限され、クレジットカードの利用もできなくなります。就職・転職については、一定の資格や職種を除き、大きな制限はありません。
住宅ローンがある場合は、担保権者との交渉が必要となり、通常は任意売却などの方法で対応することになります。
原則として会社に直接通知されることはありません・
しかし、会社から借り入れをしている場合は、債権者である会社に通知がされます。
管財事件の場合は裁判所の許可が必要、同時廃止事件の場合は制限なく引っ越せます。
【管財事件の場合】
管財事件として手続きが進められている場合、破産者は裁判所の許可なく居住地を変更できません。引っ越しが必要な場合は、裁判所に許可申請を行います。
正当な理由があれば、通常は許可されます。
【同時廃止事件の場合】
同時廃止事件の場合は、居住地変更の制限はありません。
通常通り引っ越しを行うことができます。
ただし、賃貸契約の際には保証会社の審査が必要となることが多く、自己破産の影響で審査に通りにくくなる可能性があります。
信販系ではない保証会社を選ぶ、家族名義で契約するなどの対策を検討しましょう。
戸籍や住民票には一切記載されません。
「自己破産すると戸籍に傷がつく」という誤解がよくありますが、これは事実ではありません。
自己破産や破産手続開始決定の事実が、戸籍や住民票に記載されることは一切ありません。
【本籍地の市区町村の「破産者名簿」には記載される?】
かつては、本籍地のある市区町村役場が管理する「破産者名簿」に一時的に記載されていましたが、現在は破産者名簿への記載は原則として行われなくなりました。
「免責不許可決定が確定した場合」など、ごく例外的なケースにのみ市区町村へ通知され破産者名簿への記載が行われます。
黒川聡史(司法書士法人黒川事務所 代表司法書士)
東京司法書士会所属:登録番号第4230号
簡裁代理権認定司法書士:法務大臣認定第501067号
行政書士(登録番号第19082582号)
ファイナンシャルプランナー(CFP®:1級FP技能士)
経歴: 平成19年に個人事務所を開業。債務整理を中心に15,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動
著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある
司法書士法人黒川事務所は、債務整理(任意整理・時効援用)などを専門に扱う司法書士事務所です。これまでに19年以上の実績があり15,000人以上を解決に導きました。
企業理念は『あなたの借金問題解決を低料金でサポートしたい!』です。
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