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相続した借金を時効で解決する方法と注意点を説明

親や配偶者、兄弟が死亡して借金を「相続」してしまったとき「時効援用」をすれば支払う必要がなくなるケースがあります。

 

相続放棄より有利に解決できる可能性があるので、時効に関する正しい知識をもっておきましょう。 

 

この記事では、借金を相続した場合の時効援用という解決方法と相続放棄をするか時効援用するかの判断基準を紹介してます。

相続した借金の時効援用

「相続した借金と時効援用」3つのポイント

相続した借金も時効援用の対象になる

時効援用は1人でもできる(ただし、最終的には全員がする)

時効援用と相続放棄の違いや選び方

相続した借金にも「時効」が成立する

多くの方は、借金をご家族に内緒にしているものです。

そういったケースでも、ご本人が死亡直前まで返済をしていたなら、死後にカードや請求書などが見つかって早い段階で借金が発覚するでしょう。

 

しかし、ご本人も生前に長期間返済していなかった場合、資料なども見つからないのが通常です。相続開始後すぐに借金が発覚せず、長期間経過してから判明するケースが少なくありません。

 

そのような場合でも、あわてて債権者に連絡しないでください。

一定期間を超えて支払っていない場合、「時効」が成立している可能性があります。

5年以上返済していない場合は時効で解決

5年以上返済していない場合は時効

借金には「時効」があります。

「時効」に必要な期間(消費者金融やカード会社であれば5年)が経過すると、その借金は「消滅」するので支払う義務がなくなります。

 

ただ、何もしなくても自動的に時効で消滅するのではなく、時効を援用という「時効を主張する」手続きが必要です

相続した借金でも時効が利用できる

亡くなった人の借金の時効

相続した借金にも、この消滅時効という制度が適用されます。

 

亡くなった方が長期にわたって支払っておらず5年以上経過したとき、または相続開始後の相続人による不払い期間を足して5年が経過したときには、借金は時効によって消滅するのです。

 

このように相続した借金の時効が成立すると、「時効援用」という手続きによって借金問題を解決できるので、支払う必要はありません。

相続した借金の時効援用手続きの方法を詳しく

時効援用通知書

時効の援用の手続きとは、長期間借金を支払っておらず「時効」が成立したときに「時効による利益を受けます」と通知することです。

通知方法は、後日の証拠を残すためにも「配達証明付き内容証明郵便」で行います。

 

時効に必要な期間が経過しても「援用」をしなければ時効の効果が発生しません。

相続した借金の時効を主張して支払を拒みたい場合には、必ず「時効援用」という通知を相手に送りましょう

 

時効援用をするときには「内容証明郵便」を使って「時効援用通知」を送ります。

 

内容証明郵便とは、郵便局と差出人の元へ「控え(写し)」が残るタイプの郵便です。郵便局に差出日の印鑑を押してもらえるので、日付も明らかにしてもらえます。

「配達証明」というサービスを利用すると、相手に送達された日も明確になります。

 

内容証明郵便を利用する目的は「確実に時効援用をした事実」を後からでも証明するためです。

時効援用をしても、相手から「援用されていない」と主張されては意味がありません。

「援用前に債務承認したので、援用は認められない」といわれたり、援用がない前提で裁判を起こされたりするかもしれません。

 

そのようなリスクをなくすために、時効援用は必ず内容証明郵便で行う必要があるのです。

時効援用の内容証明郵便に記載する内容

相続した借金の時効の内容証明書き方

相続した借金の時効援用をするときには、内容証明郵便に以下の事項を書き入れましょう。

  • 亡くなった人(被相続人)との関係

相続人であることがわかるように、被相続人(亡くなった方)との関係を記載してください。

たとえば「被相続人〇〇の子ども」などと書きます。

相手から証拠を要求されたら、別便で戸籍謄本などを送付しましょう。

  • 時効が成立していること

すでに最終弁済日から5年以上が経過して、時効が成立していると伝えましょう。

  • 時効を援用すること

「時効を援用します」と書かねばなりません。ここが抜けると援用通知にならないので、必ず忘れないようにしましょう。

可能であれば全員で手続きする(1人でもできる)

相続人が複数いる場合、11人の相続人が別々に時効援用できます。全員が一緒にする必要はありません。

 

ただ、借金を含めた債務は、法定相続人が相続分に応じて分割して相続するのが原則です。

1人の相続人が時効援用しても、他の相続人には時効援用の効果が及びません。債権者は他の相続人へ相続分に従った支払いを請求するでしょう。相続した借金問題を根本的に解決するには、時効援用を相続人全員で行うのがベストです

 

他の親族と没交渉や不仲で連絡をとりたくない場合には、1人でも時効援用通知を送ってもよいでしょう。

時効援用と相続放棄の違いや選び方

亡くなった方に長期間支払をしていない債務があった場合、時効援用以外にも相続放棄という解決法が利用できるケースもあります。

 

その場合は、①相続人は相続放棄をするか、②相続して時効援用をするかの2つの選択に迫られることになります。

 

どちらを選択するかは依頼人本人が決定しなければなりません。

それぞれの手続きのメリットとデメリットを紹介します。

相続放棄と時効援用の手続きの比較表
  相続放棄 時効援用
手続きの期限 あり(相続開始を知ってから3か月以内。ただし例外有) なし
プラスの資産 相続できない 相続できる
手続きの方法 家庭裁判所の手続き 郵便局で内容証明郵便を送る
複数の負債がある 一度で解決 個別に手続きをする

時効援用を選択するメリット、相続放棄するデメリット

時効援用を選択するメリット

時効援用だと資産を相続できる、相続放棄だと資産は相続できない

相続放棄すると、負債だけではなく資産も一切承継できなくなります。

被相続人が不動産や預貯金などを残しても、相続できないのはデメリットとなるでしょう。

 

時効援用であれば、資産の承継に影響しません。相続したい資産があるなら、時効援用をするメリットが大きくなります。

 

時効援用には期限がない、相続放棄には期限がある

相続放棄は、「相続開始を知ってから3ヶ月以内」に行わねばなりません。

時効援用には、こういった期限はありません。

 

相続開始後長期間が経過してしまっているなら、相続放棄はできないので時効援用する必要があります。

 

 

時効援用は手続が比較的簡易、相続放棄は裁判所で行う

相続放棄をするためには、家庭裁判所へ「申述書」や戸籍謄本などを提出して手続きしなければなりません。裁判所からの照会書に対する回答書を提出する必要もあります。

相続放棄であれば、裁判所での手続きは不要です。

 

時効援用は家族だけで解決できるが、相続放棄は親族に迷惑がかかる

たとえば、配偶者・子が相続放棄すると被相続人の父母や兄弟(亡くなっている場合はその子供)に相続権が移ります。

そうなると再度他の人が同じ問題(相続放棄するか時効援用するか)を抱えることになります。

 

時効援用できれば、後順位の相続人へ債務が回ることはありません。

(多い事例としては、相続放棄をすると親戚に迷惑をかけるので時効で解決する)

相続の開始3か月以内の例外?

原則は、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内でないと相続放棄はできません。配偶者や子供が相続人なら亡くなったことを知った日から3か月です。

ただ、3ヶ月経過後であっても、特別な事情がある場合には、相続放棄が認められる場合があります。

 

たとえば、なにも相続する財産がないと信じていて相続の手続きをしていなかったが、後日債務があることが判明した場合は、債務があると知った時から3か月以内であれば相続放棄が認められる可能性があります。

 

特別な事情とは?

  • 亡くなった方に相続財産が全く存在しないと信じたこと
  • 亡くなった方に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があること
  • 亡くなった方に相続財産が全く存在しないと信じたことについて相当な理由があること

 

上記3つの事情がある場合には、通常であれば認識できた時から3ヶ月以内に相続放棄をすれば、認められます。

相続放棄を選択するメリット、時効援用をするデメリット

相続放棄を選択するメリット

相続放棄は全ての負債をまとめて解決できるが、時効援用は複数の債権者がいる場合は別々に手続きが必要

相続放棄をすると、資産も負債も一切承継しないので、複数の負債がある場合にも一気に免除されます。

相続放棄をすると把握できていない債務も含めて放棄できるので、今後請求される恐れがなくなります。

 

一方で、時効援用の場合には「時効が成立している借金」にしか通用しません。個別に債権者へ時効援用通知を送る必要があり、手間がかかります。

 

たくさんの債権者がいる場合や不明な債権者がいる可能性がある場合には、時効援用ではなく相続放棄した方が良いでしょう。

後日、把握できていない別の債務が発覚すると、再度、時効援用で解決する必要があります

 

必ず時効が成立するとは限らない

債務によっては時効が中断している可能性(裁判されているなど)もあります。

その場合は時効が成立しなかった債務の支払い義務が残ります(金銭債務は相続分に応じて分割して相続することになります)。

 

仮に時効が失敗した場合は、債務を相続しているので支払い義務が残ります(先に一度、時効援用をしていることが相続の単純承認の該当しこの段階で相続放棄は利用できなくなります)。

時効援用すべきケース(まとめ)

以下のような状況であれば、時効援用を検討しましょう。

  • 相続開始から長期間経過している(ただし、例外有)
  • 既に単純承認してしまった(遺産分割協議が済んで名義変更などの手続きをした、預貯金を使ったり不動産を売却したりした場合)
  • 承継したい資産がある
  • 後順位の相続人に迷惑をかけたくない

相続放棄すべきケース(まとめ)

相続放棄は「相続開始から3ヶ月以内」にしかできないので、検討するなら急がねばなりません。迷っているなら、早めに司法書士までご相談ください。

  • 借金がたくさんある
  • すべての債務を把握できていない
  • 承継したい資産はない

相続した借金の時効援用をするときの注意点

配偶者や子供が相続放棄をすると、被相続人の兄弟やその子供まで手続きに巻き込む可能性があります。

この点を懸念して、相続放棄よりも時効援用を選択される方が多い傾向です。

 

一度時効援用をすると、その後他の高額な債務が見つかったとしても相続放棄はできません。そこで、時効援用を選択する場合の注意事項を紹介します。

期間の計算間違いに注意

時効援用するときには「確実に時効期間が経過している」必要があります。

 

期間が不足していると、時効援用の効果は発生しません。それどころか「債務承認」といわれて時効期間を5年間、延長されてしまうおそれもあります。

 

被相続人の不払い期間も含め、確実に5年以上が経過していることを確認してから時効援用しましょう。

債務承認に注意

次に「債務承認」にも要注意です。

債務承認とは「負債があります」と認めること。口頭や書面で告げる場合だけではなく、一部を支払っても債務承認となります。

 

時効が成立する前に債務承認すると、時効が更新されてその時点から5年間の数え直しになってしまいます。

時効が成立した後でも「払います」というと相手方の信頼が発生するので「やっぱり支払いません(時効援用します)」といえなくなります。

 

亡くなった人の負債を支払いたくないなら、「払います」などと言ったり一部を払ったりしてはなりません。100円でも債務承認になるので、要注意です。

借金の相続で困ったら、司法書士までご相談ください

借金を相続して長期にわたって支払っていない場合、時効援用や相続放棄などいくつかの対処方法があります。安全確実に負債を免れるには、専門家によるサポートが必要となるでしょう。

 

司法書士へ時効援用通知書の作成や発送を任せることも可能です。相続放棄には期限もありますので、お困りの際には、お早めにご相談ください。

時効援用に関する役立ち情報

時効援用する際に相手の会社名がわからない場合は手続きができません。

事前にご自身で調査して頂く必要があります(当事務所で調査はできません)。

一般的な調査方法としては、信用情報を取得する方法があります。

相続人であれば故人の信用情報を取得することは可能です。

・全国銀行個人信用情報センター

・株式会社日本信用情報機構

・株式会社シー・アイ・シーの3箇所

信用情報に記載がない場合は、通帳の履歴や請求書などを探すしか方法がありません。

・個人間の借金は信用情報に記載されていない

・債権譲渡されると信用情報から削除されていることがある

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