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親や配偶者、ご兄弟が亡くなり、後になって借金の督促状が届いたり、カードが見つかったりすることがあります。
「自分が払わなければならないのか」と不安に思われるかもしれませんが、決して慌てて債権者に連絡をしてはいけません。
実は、相続した借金であっても「時効援用」という手続きを行えば、支払わずに解決できるケースがあるからです。
借金を相続してしまった場合の解決策には、主に「時効の援用」と「相続放棄」の2つがあります。
どちらを選択すべきかは、遺産の状況や最終返済日からの期間によって異なります。
この記事では、相続した借金を時効で解決する方法と、相続放棄を選択すべきかどうかの判断基準について、司法書士の視点から詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
目 次(更新:2025年12月16日)
7. まとめ
消費者金融やカード会社からの借入であれば、最後の返済日から5年が経過すると「消滅時効」の期間を満たします。
多くのケースでは、被相続人が生前に長期間返済を滞納しており、死後に請求書が見つかって借金が発覚します。
この時点で既に5年が経過していれば、相続人が支払う必要はありません。
「亡くなった人の借金だから」といって時効が使えなくなることはありません。
被相続人の生前の不払い期間と、相続開始後の期間を合算して5年経過していれば要件を満たします。
ただし、5年経てば自動的に借金が消えるわけではありません。
債権者に対し、「時効なので支払いません」という意思表示(時効の援用)を行う必要があります。
この手続きをして初めて、支払い義務が法的に消滅します。
| 時効援用 | 相続放棄 | |
|---|---|---|
| 効果 | 特定の借金のみ消滅 | プラスの財産も負債も全て放棄 |
| プラスの財産の相続 | 相続できる | 相続できない |
| 手続き期限 | なし | あり(相続開始を知ってから3か月以内) |
| 手続きの方法 | 郵便局で内容証明郵便を送る | 家庭裁判所で手続きする |
| 複数の負債がある | 個別に手続きをする | 一度に解決できる |
| 親族への影響 | 影響なし | 次順位の相続人に借金が移る |
以下のような状況であれば、時効援用を優先的に検討しましょう。
相続放棄は原則として「相続開始を知ってから3ヶ月以内」に行わなければなりません。
死後数年経ってから督促が来たような場合、相続放棄は認められない可能性が高いため、時効援用で解決します。
遺産分割協議が済んで名義変更などの手続きをした、預貯金を使ったり不動産を売却したりした場合は、相続放棄ができませんので時効援用で解決します。
相続放棄をすると、借金だけでなく自宅や預貯金などのプラスの財産も一切受け取れなくなります。
「実家を残したいが、古い借金だけどうにかしたい」という場合は、時効援用が唯一の解決策です。
相続放棄をすると、支払い義務は次順位の相続人(子→親→兄弟姉妹)へと移っていきます。
親戚を巻き込むことを避けたい場合は、時効援用で解決します。
相続した借金の時効援用をするときには、内容証明郵便に以下の事項を書き入れましょう。
相続人であることがわかるように、被相続人(亡くなった方)との関係を記載してください。
たとえば「被相続人〇〇の相続人」などと書きます。
相手から証拠を要求されたら、別便で戸籍謄本などを送付しましょう。
すでに最終弁済日から5年以上が経過して、時効が成立していると伝えましょう。
「時効を援用します」と明記します。ここが抜けると援用通知にならないので、必ず忘れないようにしましょう。
相続人が複数いる場合、1人1人の相続人が別々に時効援用できます。全員が一緒にする必要はありません。
ただ、借金は、法定相続人が相続分に応じて分割して相続するのが原則です。
1人の相続人が時効援用しても、他の相続人には時効援用の効果が及びません。
そのため、他の相続人の支払い義務は残ります。
相続した借金問題を根本的に解決するには、時効援用を相続人全員で行うのがベストです。
司法書士法人黒川事務所では、あなたの借金問題を低価格で解決するご支援をしています。相談無料で分割払いOKなので毎月100人ほどご依頼いただいております。お困りであればぜひこの機会にご相談ください。
時効援用するときには「確実に時効期間が経過している」必要があります。
期間が不足していると、時効援用の効果は発生しません。それどころか「債務承認」とみなされ、時効期間が5年間延長されてしまうおそれもあります。
被相続人の不払い期間も含め、確実に5年以上が経過していることを、手元の資料などで確認して時効援用しましょう。
資料がない場合は、下記で説明する信用情報機関の「個人信用情報」を取得して調査しましょう。
債務承認とは、債権者に対して「借金があることを認める言動」をすることです。
時効期間が経過していても、不用意に債務承認をしてしまうと時効は更新(リセット)され、その時点からまた5年間経過しないと時効が主張できません。
(絶対にやってはいけないこと)
1円でも返済してしまう:「とりあえず利息だけでも」「1,000円だけでも」と言われて支払うと、債務を承認したことになります。
「支払う意思」を伝えてしまう:電話で「今は無理ですが、少し待ってください」「分割なら払えます」と言うことも債務承認にあたります。
和解書や確認書にサインする:業者が送ってきた書類に署名・捺印をして返送してはいけません。
亡くなった人の借金の督促が来ても、ご自身で対応せず、まずは司法書士や弁護士に相談してください。
借入先が銀行、消費者金融、信販会社であれば借入情報が「信用情報機関」に登録されています。
相続人であれば、亡くなった方の信用情報を取得することが可能です。
【注意点】
個人間の借金や、あまりに古い借金(債権回収会社に譲渡された場合など)は、信用情報に記載されていないことがあります。
その場合は、故人の通帳の引き落とし履歴や、自宅に届く郵便物を確認する必要があります。
3ヶ月経過後であっても、「特別な事情」がある場合には、相続放棄が認められる場合があります。
たとえば、なにも相続する財産がないと信じていて相続の手続きをしていなかったが、後日債務があることが判明した場合は、債務があると知った時から3か月以内であれば相続放棄が認められる可能性があります。
特別な事情とは?
上記3つの事情がある場合には、通常であれば認識できた時から3ヶ月以内に相続放棄をすれば、認められます。
債務によっては時効が中断している可能性(裁判されているなど)があります。
その場合は時効が成立しなかった債務の支払い義務が残ります(金銭債務は相続分に応じて分割して相続することになります)。
時効援用だと資産を相続できますが、相続放棄だと資産は相続できません。
また、時効援用は家族だけで解決できるが、相続放棄は親族も相続放棄が必要など迷惑がかかります。
先に一度、時効援用をしていることが相続の単純承認に該当し、この段階で相続放棄は利用できなくなります。
借金を相続してしまった場合でも、長期間返済されていないものであれば「時効援用」によって支払いを免れることが可能です。
時効援用や相続放棄は、ご自身で行うと「中断(更新)事由」の確認漏れや、書類の不備により失敗するリスクがあります。
安全に解決するためには、相続と借金問題に詳しい司法書士にご相談いただくことをおすすめします。
当事務所は、年間1000件程度の時効援用を扱っています。相手から送られてくる書類の書式なども熟知しているので、時効かどうか意見を聞きたいという方はお気軽にご相談ください。
黒川聡史(司法書士法人黒川事務所 代表司法書士)
東京司法書士会所属:登録番号第4230号
簡裁代理権認定司法書士:法務大臣認定第501067号
行政書士(登録番号第19082582号)
ファイナンシャルプランナー(CFP®:1級FP技能士)
経歴: 平成19年に個人事務所を開業。債務整理を中心に12,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動
著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある
企業理念は『あなたの借金問題解決を低料金でサポートしたい!』です。
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司法書士法人黒川事務所
代表者 黒川聡史
東京司法書士会所属
簡裁代理権法務大臣認定
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