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奨学金は債務整理で解決できる?奨学金が払えない場合の選択肢について解説

奨学金と債務整理 払えない場合にどんな解決法があるのか?

「奨学金の返済が苦しい…」現在、大学生の2人に1人が奨学金を利用していると言われており、卒業後に返済が困難になるケースは決して珍しくありません。

 

奨学金は「借金」です。返せない場合は、信用情報が傷ついたり、最終的には給料の差押えなどに発展する可能性があります。

 

また、親などが保証人になっている「人的保証」の場合は、家族に迷惑をかけることにもなりかねません。

 

この記事では、奨学金が払えなくなった場合に起こること、まずは検討すべき機構の救済制度、そしてどうしても返せない場合の「債務整理」による解決策について、事例を交えて詳しく解説します。

この記事を読んでわかること

  • 奨学金が返済困難なら、まず返還猶予や減額返還など機構の救済制度を検討する。

  • 奨学金は任意整理に不向き。他の高金利の借金のみを整理する。

  • 自己破産・個人再生は、保証人が親の場合は請求がいくため利用しにくい(機関保証なら可能)。

奨学金が返せないとどうなる?

まずは、奨学金を払えないとどうなるのかについて解説します。

奨学金の返還(返済)が滞ると、直ちに裁判や差し押さえなどの法的措置が取られるわけではありませんが、放置すれば段階的に状況は悪化します。

1. 督促が始まる

奨学金の督促を無視するとどうなる

返還期日までに返還が間に合わないと、数日で日本学生支援機構が委託している機関より、返還の督促が電話・郵送で行われます。

 

なお、返還の延滞をしてすぐに信用情報機関に事故情報が登録されるわけではないため、この時点で延滞分をすぐに払うか、返還期限猶予などの手続きをするなどして対処すれば問題ありません。

 

督促を放置していると、本人だけでなく連帯保証人や保証人にも督励が届くため注意しましょう。

2. 延滞金が発生する

奨学金の遅延損害金

奨学金の種類によっては、返還期日を過ぎると延滞金が発生するため注意しましょう。詳しい延滞金の利息は日本学生支援機構のホームページを確認してください。

 

なお、当月分の支払いができなかったとしても、翌月の振替日までに2カ月分の返還金額を入金できれば延滞金は発生しません。2カ月分引き落とされ、返還したものとみなされます。

3. 信用情報機関に事故情報が登録される

事故情報が登録される

返還期限猶予の手続きなどをせず、督促を無視して延滞が3カ月を超えると、個人信用情報機関の管理する信用情報に事故情報が登録されます。

 

信用情報とは個人のクレジットカードの申し込みやローンの利用履歴など、信用取引を記録した内容のことです。

 

信用情報はローン審査などに使われ、事故情報(ブラックリスト入り)が登録されると新たにクレジットカードが作れなかったり、ローンを組めなくなったりします。

 

さらに、事故情報は奨学金の返還から5年経過するまで削除されないため、車や住宅の購入時にも影響する恐れがあります。

4. 一括請求・保証人への請求

延滞から4ヶ月目以降は、債権回収会社(アルファ債権回収など)に委託され、取り立てが本格化します。

そして9ヶ月頃には「期限の利益」を喪失し、残額の一括返済を求められます。

 

人的保証の場合は、連帯保証人(親など)や保証人(親戚など)にも請求書が届き、迷惑をかけることになります。

また、機関保証を利用しているときは、保証機関が代位弁済をして本人に対しては代位弁済額の一括請求が行われます。

5. 裁判・財産の差し押さえ

一括請求に応じられない場合、支払督促などの法的手段が取られます。

場合によっては財産の差し押さえが行われます。

 

具体的には給与・預貯金などが差し押さえの対象です。

支払督促が届いた場合

奨学金の返済を放置して、裁判所から支払督促が届いた場合でも、督促異議を提出し裁判所に出廷すれば分割払いで解決することが可能です。

 

【解決方法】

  • 裁判所の書類を受け取る
  • 分割で払いたい内容の督促異議を裁判所に提出する
  • 裁判期日の案内が送られてくる
  • 裁判当日に裁判所に出廷する
  • 司法委員が間に入って和解を調整してくれる
  • 約束どおり返済をする

奨学金の「踏み倒し」や「時効」は難しい?

奨学金の返済にも民法の「消滅時効」が適用されます。「逃げ切れば時効になるのでは?」と考える方もいますが、じつは奨学金の時効が成立するケースはそれほど多くはありません。

 

時効の年数は法改正により利用した時期により異なりますが、下記の年数を返済していなければ支払わなくてよくなる可能性があります。

 

  • 2020年4月1日以降の奨学金:最終返済日から5年
  • 2020年3月31日以前の奨学金:最終返済日から10年

 

ただし、以下のケースでは時効の進行がリセットされます。

  • 裁判や支払督促を受けた場合
  • 強制執行を受けた場合
  • 一部返済を行った場合

奨学金の時効が難しい理由

消費者金融の借金とは異なり、奨学金は「分割払いの各回」ごとに時効が進行するため、全額の時効を待つには非常に長い期間が必要です。

 

また、裁判を起こされるとその都度時効がリセットされます。

 

ただし、機関保証の場合は、保証機関により代位弁済されたら時効のカウントが全額について始まりますので、人的保証よりも時効期間の経過は早くなります。

まずは日本学生支援機構の4つの救済制度を検討する

奨学金の貸与機関によっては、災害や病気、経済的理由などがある場合、奨学金の返還猶予や免除などの救済制度を活用できることがあります。

1. 減額返還制度

奨学金の減額返還

減額返還制度とは、月々の返還額を1/2または1/3にして返還を続ける制度で、最長15年(180カ月)まで延期できます。

 

奨学金の返還総額そのものを減額できる制度ではないものの、毎月の返還負担の軽減が可能です。

 

減額返還制度を利用するためには、災害や傷病、その他経済的理由(年間収入金額の条件あり)などの適用条件を満たしている必要があります。

実際に利用する際には、郵送やインターネットで「奨学金減額返還願」の提出が必要です。

2. 返還期限猶予

奨学金の返還猶予

返還期限猶予とは、一定期間、元金や利子の支払いを猶予できる制度で、返還を先送りできる上限期間は通算10年(120カ月)です。

 

なお、元金や利子の支払いが免除されるわけではなく、猶予をする分、返還終了年月日も先送りされるため注意しましょう。

 

返還期限猶予は災害や傷病、経済困難、失業などの事情により申請が可能です。

その他、現在返還を延滞中であっても上記の条件に該当し、審査を通過すれば適用されることがあります。

この場合、延滞期間のうち猶予事由に該当する期間についても返還期限猶予が適用されます。利用するときは郵送やインターネットで「奨学金返還期限猶予願」の提出が必要です。

3. 所得連動返還型無利子奨学金制度

平成29年4月以降に第一種奨学金の奨学生として採用されている場合は、所得や子供の数に基づき返還月額を算出する返還方式です。

収入が低い間は返還額を低く抑えられます。

4. 返還免除

返還免除とは、以下のどちらかに該当する場合に奨学金の返還を完全に免除できる方法です。

  • 本人が死亡したとき

  • 精神や身体の障害により労働能力を喪失する、または、労働能力に高度の制限を有したとき

奨学金を借りている人の「債務整理」について

奨学金の返済が厳しい場合に、奨学金だけでなく他にも債務があれば、奨学金の猶予や減額返還と併せて債務整理も検討する必要がでてきます。

 

【方法は2つ】

1.奨学金を除いて手続きができる任意整理

2.奨学金も含めて対応する法的整理(自己破産・個人再生)

 

奨学金の債務整理は、「保証人が誰か(人的保証か機関保証か)」によって取れる選択肢が大きく異なります。

奨学金の保証人は人的保証?機関保証?

奨学金の保証人はどっち

日本学生支援機構の奨学金の保証人は下記の2パターンがあります。

 

  • 人的保証(連帯保証人が親・保証人が親戚)

債務整理をすると保証人である親や親せきに迷惑がかかります

 

  • 機関保証(保証料を支払って保証会社が保証)

債務整理をしても、親族には迷惑がかからない(保証会社が代位弁済し、債権者が保証会社に変わるだけ)。

※こちらの機関保証の場合は、債務整理の選択肢が広がります。

奨学金は任意整理にむかない

奨学金の任意整理

任意整理は、将来の利息をカットして分割払いにする手続きです。

 

しかし、奨学金はもともと低金利(または無利子)であり、長期分割になっているため、奨学金自体を任意整理するメリットはほとんどありません。

 

【有効なケース】

「奨学金以外の借金(カードローンやリボ払い)」がある場合です。

奨学金は手続きから除外し(今まで通り払い)、高金利な他の借金だけを任意整理することで、家計全体の負担を減らす方法が最もよく選ばれます。

これなら保証人にも迷惑はかかりません。

奨学金がある人の自己破産・個人再生

奨学金の自己破産や個人再生

借金をゼロにする「自己破産」や、大幅に減額する「個人再生」は、すべての借金が対象になります。

 

そのため、奨学金を外して手続きすることはできません。

 

【機関保証の場合】

問題なく利用できます。借金や奨学金の支払い義務が免除・減額されます。

 

【人的保証の場合】

保証人(親・親戚)に請求が行きます。

 

保証人に請求が行く場合は、今後の支払方法について学生支援機構と保証人が話し合いをします。

多くのケースでは、引き落とし口座を保証人の口座に変更して、保証人が支払いを継続しています。

 

保証人への請求を避けるためには奨学金を除外した任意整理しか選択できません。

奨学金の債務整理(まとめ)

奨学金自体の手続き 現実的な解決方法
任意整理 メリットがない 他の借金を任意整理する
個人再生

親(親戚)が保証人なら請求が行く

機関保証なら家族に影響なし

人的保証なら他の借金を任意整理する

機関保証なら個人再生も検討可能

自己破産

親(親戚)が保証人なら請求が行く

機関保証なら家族に影響なし

人的保証なら他の借金を任意整理する

機関保証なら自己破産も検討可能

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奨学金を借りている人が親にバレずに債務整理する方法

借金がある方で債務整理を検討している人は、借金の存在自体が家族に内緒という方がほとんどです。

ここでは奨学金がある場合に、家族に内緒で手続きできるかを解説します。

任意整理なら親にバレない

任意整理であれば、奨学金の有無や同居・別居のどちらであっても親に内緒で手続きすることは可能です。

自己破産・個人再生は機関保証で別居していればバレない

個人再生・自己破産の場合は保証人の種類と同居か別居によります。

  • 人的保証の場合

自己破産・個人再生をすると、必ず保証人(親)に通知が行くためバレます

  • 機関保証の場合

同居している場合は、裁判所に提出する「家計収支表」の作成の協力や「同居家族の収入証明」などの提出に協力頂く必要があるので、内緒で手続きすることは難しいです。

別居している場合は、バレずに手続きすることは可能です。

奨学金を借りている人の債務整理の事例紹介

奨学金を借りている人の任意整理・個人再生・自己破産の事例を紹介します。

奨学金の保証人がネックで「任意整理」を選択したAさん

【状況】

製薬会社の営業職Aさん(手取り23万円)。

奨学金300万円(人的保証:父)に加え、営業の接待費やストレスからカードローン等の借金が300万円(月々10万円返済)に膨らんでいました。

 

【相談の経緯】

当初、Aさんは「自己破産」を考えていました。しかし、自己破産をすると保証人である父親に奨学金の請求がいってしまいます。「親には絶対に迷惑をかけたくない」という強い希望があり、任意整理を選択しました。

 

【解決策】

  • 支出の見直し:スマホを格安SIMにし、自腹接待をやめる。
  • 奨学金の減額返還:機構に申請し、奨学金の月々の支払いを減額(月3万円→2万円以下へ)。

  • 他の借金の任意整理:奨学金以外の300万円について任意整理。将来利息をカットし、月々の返済を約5.5万円に圧縮。

【結果】

奨学金と合わせても月々の支払いが手取りの範囲内に収まり、親に知られることも迷惑をかけることもなく、完済への道筋が立ちました。

機関保証のため「個人再生」で借金を大幅減額したBさん

【状況】

会社員Bさん(手取り25万円)

奨学金は機関保証

【借金総額】

600万円(奨学金300万円 + カード類300万円)

 

【借金の状況】

現在の毎月の返済額は10万円を超え、生活費が不足する自転車操業状態でした。任意整理で利息をカットしても、カード類300万円を返すには月6万円(+奨学金返済2万5千円)の支払いが続くため、解決が困難でした。

 

【解決策と結果】

保証人がいない「機関保証」だったため、「個人再生」を選択しました。

  • 借金総額: 600万円 → 120万円に減額(奨学金含め減額)

  • 毎月の返済: 10数万円 → 約34,000円(3年払い)

 

借金が5分の1に圧縮され、無理なく生活できるようになりました。

機関保証であれば、このように奨学金を含めて大幅に減額することが可能です。

返済不能で親に相談し「自己破産」を選択したCさん

【状況】

会社員(手取り20万円)/一人暮らし

奨学金は人的保証(父・叔父)

【借金総額】

400万円(奨学金150万円 + カード類250万円)

 

【借金の状況】

当初は親に内緒で「任意整理」を希望されました。しかし、計算すると毎月の支払いが「6万円以上(借金返済+奨学金)」となり、手取り20万円の家計では支払継続が不可能という判断になりました。

 

【解決策と結果】

ご両親に事情を話し、「自己破産」を選択しました。

  • 本人の借金: 全て免除(ゼロ)

  • 奨学金の返済: 連帯保証人であるお父様が引き継ぐ

 

Cさんの支払い義務はなくなりました。人的保証のためお父様に請求がいきましたが、学生支援機構と相談し、お父様の口座から毎月の分割返済を継続することになりました。

奨学金の債務整理に関するよくある質問

奨学金がある人の債務整理に関するよくある質問を紹介します。

Q. 親が債務整理をすると、子供は奨学金を借りられなくなりますか?

基本的には借りられます。親がブラックリスト(信用情報に事故情報がある状態)の場合、親は奨学金の「連帯保証人」になることはできません。

しかし、子供自身が借りることに制限はありません。この場合、保証人を立てない「機関保証」を利用すれば、問題なく奨学金を借りることができます

Q. 保証人を確認する方法はありますか?

申込時の書類や学生支援機構に問合わせることで確認できますが、「スカラネット・パーソナル」に登録することでログインして契約内容を確認できます。

スカラネット・パーソナルはこちら

Q. 自分でできる対処法はありますか?

固定費(家賃、保険、スマホ代)の削減や、不用品売却、副業などで収支を改善できないか見直しましょう。

それでも追いつかない場合は、借入を繰り返す前に専門家へ相談してください。

まとめ

奨学金は「借金」であり、放置等の対応を誤ると給料の差押えや保証人への請求など、自分だけでなく家族の生活にも影響を及ぼします。

 

  • 少し苦しい段階:日本学生支援機構へ「減額返還」や「期限猶予」を相談する。

  • 他の借金もある・もう払えない段階:司法書士や弁護士に相談し、債務整理を検討する

 

特に「親に迷惑をかけたくない」という方は、自己破産などの大事になる前に、任意整理で解決できる段階で相談することが重要です。

 

当事務所では、奨学金を含めた借金問題のご相談を承っております。家計の見直しも含めて最善の解決策を一緒に考えますので、お気軽にご相談ください。

この記事の執筆者

執筆者 司法書士黒川聡史

黒川聡史(司法書士法人黒川事務所 代表司法書士)

東京司法書士会所属:登録番号第4230号

簡裁代理権認定司法書士:法務大臣認定第501067号

行政書士(登録番号第19082582号)

ファイナンシャルプランナー(CFP®:1級FP技能士)

経歴: 平成19年に個人事務所を開業。債務整理を中心に12,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動

著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある

司法書士法人黒川事務所が選ばれる理由

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司法書士法人黒川事務所
代表者 黒川聡史
東京司法書士会所属
簡裁代理権法務大臣認定

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  • 借金問題専門で18年以上の実績
  • 解決した依頼人は12000人以上。現在は年間約1500人の方から依頼(曖昧な相談実績ではなく実際の依頼件数)
  • YouTubeで債務整理をわかりやすく発信(こちら)

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