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「父親が亡くなった後に思いがけない借金が発覚した」「いきなり身に覚えのない借入についての通知がきた」
故人の死後、突然このような事態に直面すると、驚きと戸惑いで冷静な判断が難しくなります。
しかし、適切な知識を持って対処することで、予期せぬトラブルや借金の引き継ぎを回避することが可能です。
借金などのマイナス財産の相続を望まない場合、法的な手続きである「相続放棄」を行うことで、その支払い義務から逃れられます。
ただし、相続放棄をしても、その借金自体が消えるわけではありません。放棄された借金は、遺産を相続する権利を持つ次の順位の相続人へと引き継がれます。
この記事では、「借金の相続放棄」をテーマに、手続きの基本的な仕組みから、放棄した場合に誰が借金を負うことになるのか、さらにメリット・デメリット、そして絶対に守るべき注意点まで、詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
| 順位 | 相続人 |
|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者(婚姻関係にある場合) |
| 第1順位 | 子ども、孫(代襲相続) |
| 第2順位 | 直系尊属(父母、祖父母など) |
| 第3順位 | 兄弟姉妹、甥姪(代襲相続) |
例えば、第1順位の子全員が相続放棄した場合、相続権は第2順位の直系尊属(故人の父母など)へと移行します。
この場合、直系尊属が新たな借金の返済義務を負うことになります。
●被相続人:父親、死亡後に借金が発覚
●相続人:配偶者、長男、次男
①長男が相続放棄した場合
長男は相続を逃れますが、相続放棄をしない配偶者や次男が引き継ぎ、借金を払わなければなりません。
●相続人:配偶者、次男
②配偶者と長男と次男(子全員)が相続放棄した場合
配偶者(母親)と相続第1順位の子全員が相続放棄した場合には、相続が次順位である第2順位(直系尊属)に移り、直系尊属(父親の父母など)が他界している場合には、第3順位(父親の兄弟姉妹)に移ります。
●第2順位の直系尊属(父親の父母など)
●第2順位が亡くなっている(相続放棄した)場合は、第3順位の父親の兄弟姉妹
③法定相続人全員が相続放棄した場合
法定相続人全員が相続放棄した場合、被相続人(債務者)から借金返済義務を引き継ぐ人がいなくなります。
その場合に、相続財産管理人が選任されると、相続財産の範囲内で債権者に支払いが行われます。相続財産管理人は債権者からも選任申立が可能です。
亡くなった人の子が相続放棄した場合、孫が借金返済義務を負うことはありません。
相続放棄によって、子供は「最初から相続権がなかった」とみなされるため、その影響は孫にまで及ぶことはありません。
被相続人が亡くなる以前に子供が亡くなっている場合は、孫が代襲相続して第1順位の相続人なります。
この場合は相続を放棄するのであれば手続きが必要です。
また、第3順位の兄弟姉妹に相続権が回ってきた場合に、被相続人よりも先に兄弟姉妹が亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子が代襲して相続することになります。この場合も相続を放棄するのであれば手続きが必要です。
連帯保証人である場合の注意点
相続放棄をしたとしても、もし相続人が故人の借金の連帯保証人になっている場合は、連帯保証人としての責任はそのまま残ります。
この場合、相続放棄によって相続人としての返済義務は免れても、連帯保証人として債権者から請求されれば、その借金の返済を免れることはできません。
被相続人のマイナス財産を引き継がないですむ
相続トラブルに関わらないですむ
すべての相続財産を放棄しなければならない
相続放棄の撤回はできない
他の相続人に影響をおよぼす
相続放棄は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
| ながれ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 財産の調査 | 故人のプラスの財産(預貯金、不動産など)とマイナスの財産(借金、未払金など)の全体像を把握します。 | 相続開始を知った日から3ヵ月以内(熟慮期間)が期限です。調査に時間がかかる場合は、裁判所に期間の延長を申請できます。 |
| 必要書類の収集 | 申述書作成と同時に、戸籍謄本など、家庭裁判所に提出するための書類を集めます。 | 書類収集に時間がかかる場合があるため、早めに着手します。 |
| 家庭裁判所へ提出 | 「相続放棄申述書」に必要事項を記入し、収集した必要書類と、収入印紙、切手を添えて家庭裁判所に提出します。 | 3ヵ月の期限を厳守します |
| 照会書・回答書の提出 | 裁判所から、申述が本人の意思に基づくものかなどを確認するための「照会書」が届きます。質問に記入し、期限内に返送します。 | 照会書に記載された提出期限を守ります。 |
| 受理通知書の受領 | 相続放棄が認められると、家庭裁判所から「相続放棄受理通知書」が送付されます。 | これで手続きは完了です。この通知書は、債権者への放棄した証明として重要になります。 |
家庭裁判所に提出する主な書類は以下の通りです。
申述人(相続放棄をする人)と被相続人(亡くなった人)の関係性によって、必要となる戸籍謄本の種類が異なります。
| 種類 | 内容 | 取得先 |
|---|---|---|
| 相続放棄申述書 | 申述人(相続放棄をする人)が記入する所定の用紙です。 | 家庭裁判所の窓口または裁判所のホームページ |
| 故人(被相続人)の住民票除票または戸籍の附票 | 故人の最後の住所地を確認するための書類です。 | 故人の本籍地または最後の住所地の役所 |
| 申述人(放棄する人)の戸籍謄本 | 申述人自身の身分関係を証明する書類です。 | 申述人の本籍地の役所 |
| 故人(被相続人)の死亡時から出生時までのすべての戸籍謄本 | 故人と申述人の関係を証明し、他に相続人がいないかを確認するために必要です。 | 故人の本籍地の役所 |
| 収入印紙と郵便切手 | 収入印紙(手数料800円)と連絡用の郵送費です。金額は管轄の裁判所のホームページで確認できます。 | 郵便局 |
上記以外に、直系尊属(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)が申述する場合は、さらに追加の戸籍謄本が必要になります。
故人の名義の預貯金口座を解約したり、払い戻しを受けたりして、使ってしまう行為は、財産の処分とみなされます。
【葬儀費用について】
葬儀費用を故人の預貯金から支出した場合でも、その金額が社会通念上不相当に高額でなければ、相続放棄が認められた判例は存在します。
しかし、判断は非常に難しいため、原則として故人の財産に手を付けず、自身の資金で立て替えるなど、慎重に対応する必要があります。
亡くなった方宛ての請求書(税金、クレジットカードの利用料、病院代など)が届いた際、故人の預貯金から支払ってしまうと、「単純承認」とみなされて相続放棄ができない可能性があります。
ただし、個人の預貯金ではなく自分の預金から支払ったのであれば、保存行為に該当し単純承認に該当しないと判断されて相続放棄が認められた高裁判例があります。
どうしても払うのであれば、自分の預金からということになりますが、相続放棄をすると支払義務はなくなるので、事情を説明して支払わない方が無難です。
【例外:価値のない遺品、祭祀財産】
被相続人の身の回りの品物(衣類や日用品など)を形見分けとして処分したとしても、経済的価値が高くないものを一般的に認められる範囲で処分した場合には、相続放棄は可能です。
また、お墓や位牌などの祭祀財産については、祭祀承継者が承継することになっており、相続放棄の判断には影響しません。
相続人が他の相続人と協議を行い、遺産の分配をどのようにするか決める「遺産分割協議」に参加し、その結果を記した遺産分割協議書に署名捺印する行為は、「相続する意思がある」とみなされ、単純承認が成立します。
相続放棄を検討している場合は、遺産分割協議に関わらないように注意してください。
相続において、預貯金や不動産などのプラス財産があっても、後から借金が発覚するケースもあります。
相続財産を処分すると相続放棄ができなくなります。
遺産相続においては、財産調査を行った上で、相続放棄を決断することが大切です。
相続放棄の手続きは、故人が亡くなったこと、および自分が相続人になったことを知った日(相続開始の日)から3ヵ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。
この期間は「熟慮期間」と呼ばれ、期限を過ぎると原則として主張は認められないため、注意が必要です。
相続放棄をする場合、借金の請求が回る次順位の相続人に対して、事前に状況を説明し、話し合いを行うことが望ましいです。
予期せぬ請求による親族間のトラブルを避けることができます。
相続人全員が相続放棄をした場合でも、2023年4月の民法改正により、「放棄の時に相続財産を現に占有している」相続人には、引き続き財産の管理義務が残る場合があります。
管理義務から免れるためには、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任する手続きが必要です。
死亡保険金や死亡退職金は、受取人が指定されていれば、基本的に相続財産とは別枠の固有の権利と考えられます。
そのため、相続放棄をしても受け取ることができます。
家庭裁判所から届く「相続放棄申述受理通知書」のコピーを債権者に郵送して伝えます。
電話で伝えるだけでは請求が止まらない場合があるため、書面で証拠を送ることが重要です。原本は手元に保管し、必ずコピーを送りましょう。
可能ですが、書類の不備や期限切れのリスクがあるため注意が必要です。
戸籍謄本の収集や申述書の作成をご自身で行うことは可能です。
しかし、一度却下されると再申請ができない手続きですので、少しでも不安がある場合や、3ヶ月の期限が迫っている場合は、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
「借金の存在を知った日」から3ヶ月以内であれば、認められる可能性があります。
通常は「亡くなった日」から3ヶ月ですが、借金の存在を知り得なかった正当な理由があれば、通知が来て事情を知った日から3ヶ月として認められる場合があります。
相続財産で支払うか相続人の固有の財産で支払う必要があります。
支払えない場合は、相続人が債務整理(任意整理や自己破産など)を行うことも可能です。
亡くなった親に借金があった場合、子が相続放棄をすることで、借金の支払い義務は次順位の相続人(親や兄弟姉妹)へと移ります。
トラブルを回避し、自身が負債を抱えないようにするためには、以下の3点を必ず守って、迅速かつ慎重に行動することが重要です。
相続放棄の手続きは複雑で期限も厳しいため、不安な場合は専門家(弁護士や司法書士)に相談することをおすすめします。
当事務所は、借金問題に関する無料相談を行っています。借金問題の解決実績は豊富です。お気軽にご相談ください。
黒川聡史(司法書士法人黒川事務所 代表司法書士)
東京司法書士会所属:登録番号第4230号
簡裁代理権認定司法書士:法務大臣認定第501067号
行政書士(登録番号第19082582号)
ファイナンシャルプランナー(CFP®:1級FP技能士)
経歴: 平成19年に個人事務所を開業。債務整理を中心に12,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動
著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある
企業理念は『あなたの借金問題解決を低料金でサポートしたい!』です。
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代表者 黒川聡史
東京司法書士会所属
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