セゾン債権回収から身に覚えがない請求書が届いた場合の対応について

近年では、詐欺業者が適法な債権回収会社の名称をかたって、架空請求の書類を送りつけてくるケースもあります。

送られてきた書類が詐欺でないかを確認するためには、次の2点を確認してください。

・送り主の名称と住所、電話番号、許可番号

・債権の「譲渡人」または「原債権者」

セゾン債権回収は、滞納された債権を譲り受けるなどして回収する債権回収会社（サービサー）です。会社概要は以下のとおりです。

会社情報が正しく記載されている場合は、債権の「譲渡人」または「原債権者」の欄を見てください。あなたが滞納している借入先の会社名が記載されていれば、セゾン債権回収はそこから債権を譲り受けて正当に請求してきている可能性が高いです。

なお、セゾン債権回収は、主に以下の会社から債権を譲り受けて債権回収業務を行っています。

• クレディセゾン
• セブンCSカードサービス
• りそなカード
• トヨタファイナンス
• 日産フィナンシャルサービス
• 出光クレジット

セゾン債権回収からの請求が詐欺ではないと判断した場合は、次に以下の項目を確認してください。

・請求額

・支払期日

・期限の利益喪失日

・最終入金日（記載されていないことが多い）

最も重要な項目は、「最終入金日」です。貸金業者からの借金は、最後の取引から5年が経過すれば消滅時効が完成するからです。消滅時効が完成しているかどうかによって、今後の対処法が大きく変わってきます。

とはいえ、セゾン債権回収から送られてくる請求書には、通常、債権の譲渡人である借入先への最終入金日などは記載されていません。

そのため、元の借入先へ返済していたときの通帳の履歴や振り込み明細書などを探して、最終入金日を確認しましょう。

記録が何も残っていない場合は記憶に頼るしかありませんが、「最終入金日から5年以上が経過しているかどうか」を確認することが重要です。

セゾン債権回収から送られてくる請求書には、支払期日とともに、「その日までに支払えない場合は必ず連絡をすること」という文言が記載されています。

請求書を無視するのは禁物ですが、安易に電話連絡をするのも危険です。

なぜなら、消滅時効期間が経過していても、担当者との会話の中で支払い義務を認める発言をすると債務を承認したことになるからです。

債務を承認してしまうと、そのときからさらに5年が経過するまで、消滅時効の主張はできなくなります。

自分で直接電話連絡をする前に、弁護士または司法書士に相談して、消滅時効が完成しているかどうかを確認することをおすすめします。

指定された支払期日までに支払わず、電話連絡もしていなければ、文書や電話による督促が連日のように繰り返されます。

セゾン債権回収としては法律に従って正当に請求しているのですから、当然のことです。

督促がきっかけで家族にバレるリスクも高くなります。

セゾン債権回収に譲り渡された債権は滞納状態が続いていますので、無視している間、遅延損害金がかかり続けます。

遅延損害金の利率は、利息よりも高く設定されるのが一般的です。

かつ、債権回収会社が譲り受けた債権は一括請求が可能な状態なので、元の借入先に対する滞納額の全体に対して遅延損害金がかかります。

そのため、セゾン債権回収の請求を無視していると、短期間のうちに返済額が大きく膨らむおそれもあることに注意が必要です。

債権回収会社が自宅にまで取り立てに来るケースは少ないですが、実際に取り立てに来る可能性もあります。

セゾン債権回収は「現地調査代行業務」として、現地訪問による債務者の居住確認や生活状況の調査、近隣住民などへの聞き込み調査なども行っています。

そのため、セゾン債権回収の担当者が自宅へ訪問してくる可能性は十分にあると考えた方がよいでしょう。

セゾン債権回収は適法な会社なので暴力的・脅迫的な取り立てを行うことはありませんが、対応には注意が必要です。担当者との会話の中で支払い義務を認める発言をすると、消滅時効期間がリセットされてしまいます。

また、自宅に取り立てが来ると家族に心配をかけるでしょうし、近所の人たちの目も気になるかもしれません。

セゾン債権回収からの請求を無視し続けていると、裁判を起こされる可能性が高いです。

裁判を起こされると裁判所から書類が届けられますが、その書類も無視していると、セゾン債権回収は強制執行手続きにより債務者の財産を差し押さえることが可能となります。

最終的には給料や預金口座などを差し押さえられることがあるので、注意しましょう。

消滅時効が成立している場合には、時効を理由として支払いを拒否できます。

ただし、消滅時効が成立しただけで自動的に債務が消滅するわけではありません。

セゾン債権回収からの請求を止めるためには、その時効を援用しなければなりません。

時効の援用とは、相手方に対して、「消滅時効が成立したため、債務は支払いません」という意思表示をすることです。

この意思表示は口頭でも有効ですが、通常は証拠を残すためにも書面をもって行います。内容証明郵便で「消滅時効援用通知書」を作成し、セゾン債権回収宛に送付することをおすすめします。

消滅時効が成立していない場合は、支払い義務があります。請求額をすぐに一括で支払えればよいのですが、それは難しいことが多いでしょう。

そんなときは、早めにセゾン債権回収に連絡し、担当者に事情を伝えて、支払期日の延期や分割払いの交渉をする方が得策です。

ただし、弁護士や司法書士を通さず自分で交渉すると、不利な和解条件を押しつけられる可能性もあります。

具体的には、分割払いに応じてもらえたとしても利息を付けられたり、短期間での完済を求められたりすることが多いので注意しましょう。

支払いが難しい場合には、債務整理を検討した方がよいでしょう。セゾン債権回収も、債務整理の手続きには協力してくれます。

弁護士または司法書士に依頼して任意整理をすれば、今後の遅延損害金のカットや、3年～5年での分割払い、交渉次第ではより長期間の分割払いでの和解も期待できます。

自己破産や個人再生をすれば、他の借金とも併せて抜本的に解決することが可能です。一定の条件を満たせば、自己破産では借金がゼロになりますし、個人再生では元本・利息・遅延損害金を含めて大幅に減額できます。

自己破産および個人再生の手続きは複雑なので、弁護士・司法書士に依頼してサポートしてもらうことをおすすめします。

「支払督促」という表題の書類が届いた場合は、受け取ってから2週間以内に、同封の「異議申立書」に必要事項を記入し、署名・押印して裁判所へ返送してください。

異議申し立てが受理されると、民事訴訟の手続きに移行します。その後の対応方法については、次の「訴状が届いた場合の対応」をご参照ください。

異議申立書を提出せずに放置すると、最終的には仮執行宣言付支払督促が確定し、給料や預金口座などを差し押さえられるおそれがあります。

なお、異議申立書を郵送で提出する場合は、2週間以内に裁判所へ「必着」であることにご注意ください。

「訴状」という表題の書類が届いた場合は、所定期の期日までに、同封の「答弁書」に必要事項を記入し、署名・押印して裁判所へ返送してください。

支払督促に対して異議申し立てをした場合にも、改めて裁判所から呼出状などと一緒に答弁書の書式が送られてきますので、同じように返送しましょう。

裁判所が送ってくる答弁書の書式には、希望する和解案を記載する欄が設けられています。この欄に返済額や返済回数（返済期間）、毎月の返済額などの希望案を記載して提出すれば、和解の提案をしたことになります。

その後、基本的には第1回の裁判期日までにセゾン債権回収と連絡を取り合って和解交渉を行い、合意ができれば第1回の裁判期日において和解が成立します。

合意に至らない場合でも、裁判期日には出頭しましょう。裁判所も、基本的には和解が成立するように協議を仲介してくれますので、裁判期日を重ねて和解できる可能性もあります。

なお、裁判所からの書類を受け取ってから和解協議までの手続きは、弁護士または司法書士に依頼することで的確に行いやすくなります。裁判所から書類が届いたら、すぐ弁護士・司法書士に相談するのがおすすめです。

ここまでは、裁判上の和解成立を目指すことを前提としてご説明しましたが、請求額や収入、生活状況などによっては、分割でも支払えないこともあるでしょう。そんなときは、債務整理による解決をおすすめします。

セゾン債権回収から裁判を起こされた後でも、債務整理をすることに支障はありません。

任意整理については、セゾン債権回収との交渉は裁判を通じて行うしかありませんが、他の借金を任意整理することで、セゾン債権回収と裁判上の和解ができるようになることもあるでしょう。

自己破産と個人再生については、判決が出た後でも、さらには差押えが行われた後でも申し立てが可能です。差押え後に自己破産または個人再生を申し立てれば、差押えを止めることもできます。

裁判を起こされて、支払えない状況であっても諦めずに、弁護士または司法書士に相談して債務整理を検討してみましょう。

当事務所にはセゾン債権回収の請求に対しての時効援用のご依頼を多く頂きます。

長期間返済していない方は、下記のように時効で解決できるケースが多く存在します。

■ 相談内容

住宅ローンの審査に落ちたAさんが、CIC（信用情報機関）を取得したところ、クレディセゾンの延滞情報が登録されていることが判明しました。

過去に利用していたカードの未払いが原因でしたが、すでに長期間放置していたため、当事務所に相談されました。

■ 対応

当事務所がクレディセゾンに受任通知を送付したところ、クレディセゾンが回収を委託していたセゾン債権回収から回答がありました。

請求内容は以下の通りでした。

元金：30万円

損害金：90万円

合計請求額：120万円

最後の返済日：2008年10月

当事務所は、消滅時効が成立している可能性が高いと判断し、直ちに時効援用の手続きを進めました。

■ 解決結果

セゾン債権回収に対し、消滅時効の援用を主張した結果、請求は取り下げられ、債務の支払い義務が消滅しました。

■ 相談内容

Bさんは、セゾン債権回収の代理人である弁護士法人から「ご通知」という請求書を受け取り、慌てて当事務所に相談されました。

書面の内容から、りそなカードがセゾン債権回収に譲渡したものであり、セゾン債権回収が弁護士法人に回収を委託していたことが判明しました。

■ 受任と対応

当事務所が弁護士法人に受任通知を送付し、詳細を確認したところ、以下の回答がありました。

元金：6万円

損害金：4万円

合計請求額：10万円

最後の返済日：2010年2月

同時に、弁護士法人から債権回収業務の辞任の連絡もありました。

当事務所は、消滅時効が成立していると判断し、セゾン債権回収に対して時効の援用を行いました。

■ 解決結果

時効援用の主張が認められ、請求は取り下げられ、債務は消滅しました。

セゾン債権回収から身に覚えがない請求書が届いたときは、まず、詐欺なのか、正当な請求なのかを見極める必要があります。

詐欺ならば無視しても問題ありません。

正当な請求ならば、さらに消滅時効が成立しているかどうかを確認し、状況に応じて適切な対処法を速やかにとることが大切です。

当事務所には、借金問題や債務整理のご相談に関する実績が豊富にございます。身に覚えがない請求書が届いてお困りのケースにも親身に対応しますので、一人で悩まずお気軽にご相談ください。

黒川聡史（司法書士法人黒川事務所 代表司法書士）

東京司法書士会所属：登録番号第4230号

簡裁代理権認定司法書士：法務大臣認定第501067号

行政書士（登録番号第19082582号）

ファイナンシャルプランナー（CFP®：1級FP技能士）

経歴: 平成19年に渋谷で個人事務所を開業。債務整理を中心に12,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動

著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある