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自己破産で損害賠償責任はなくなる?免責されるケース・残るケースを解説

損害賠償は自己破産したら免除される?

「人に損害を与えてしまい、賠償を抱えたまま借金も返せない。自己破産すれば、この損害賠償も払わなくていいのか?」

 

じつは、損害賠償でも、契約違反(債務不履行)が原因のものや、不注意による事故の多くは自己破産で免責されます。一方で、わざと人を傷つけた・飲酒運転で死傷させたといった一部の賠償は、破産しても残ります。

 

免責されるかどうかは「どんな原因で生じた賠償か」です。

 

この記事では、自己破産で払わなくてよくなる損害賠償と払わなければいけない損害賠償を具体例で整理し、残ってしまう場合でも破産する意味があるのかなど解説します。

この記事を読んでわかること

  • 債務不履行による損害賠償責任は自己破産すると免責される
  • 窃盗・横領・詐欺(積極的な害意)などが原因の損害賠償責任は免責されない
  • 飲酒運転、無免許運転、ひき逃げなど(故意・重大な過失)で怪我をさせた損害賠償責任は免責されない

自己破産の「免責」と「免責不許可事由」「非免責債権」の関係

損害賠償責任の中でも、一部は「非免責債権」に該当します。

その場合、自己破産の申し立てを行っても、損害を与えた人への支払い義務は免責されません。

 

まずは、破産手続きにおける「免責不許可事由」と「非免責債権」の意味や、損害賠償責任との関係を簡単に解説します。

免責許可

免責許可で借金免除

自己破産は、支払不能になった人が、持っている財産で清算をしたうえで、残りの支払いを免除してもらう裁判手続きです。

 

手続きは、財産を調査して債権者に配当する「破産手続」と、債務の支払い義務を免除してもらう「免責手続」に分かれています。

 

破産手続だけでは支払い義務は消えず、借金を帳消しにするには、必ず免責手続を経て裁判所の「免責許可」を得る必要があります。

免責不許可事由

免責不許可事由

免責不許可事由とは、これがあると免責が認められない可能性がある事情のことで、破産法252条1項各号が定めています。

 

たとえば、浪費やギャンブルで負債を膨らませた、財産を隠した、裁判所に虚偽の説明をした、過去7年以内に免責許可を受けている、といったものです。

 

ただし、これに該当しても、裁判所が一切の事情を考慮して免責を認める「裁量免責」(破産法252条2項)という制度があります。

 

実際、浪費やギャンブルが理由でも、多くのケースは裁量免責によって最終的に免責が認められています。

非免責債権

自己破産手続きで免責が許可されたとしても、破産法第253条で定められた「非免責債権」に該当する場合は、自己破産の免責の対象になりません

“第二百五十三条 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。

一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)

四 次に掲げる義務に係る請求権

イ 民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務

ロ 民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務

ハ 民法第766条(同法第749条、第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務

ニ 民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務

ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの

五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権

六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)

七 罰金等の請求権”

例えば、滞納している税金や、離婚後の養育費の支払いは非免責債権に該当するため、自己破産の手続きをしても免除されません。

 

損害賠償責任(損害賠償請求権)が非免責債権にあたるのは、この破産法第253条1項2号や3号に該当する場合です。

「非免責債権」と「免責不許可事由」は別物

非免責債権(残る損害賠償など)があっても、自己破産そのものはできますし、ほかの借金は免責されます。

 

非免責債権は「免責の効力が及ばない特定の債権」、免責不許可事由は「免責そのものを認めるか否かの判断材料」で、まったく別の話です。

 

損害賠償を抱えていても破産を諦める必要はありません。

そもそも損害賠償責任とは

損害賠償責任とは、他人に損害を与えてしまった結果、その損害を賠償するために負った債務のことです。

この中でも、非免責債権に該当しない損害賠償責任については、自己破産手続で免責決定を得ることにより免除されます。

 

ここでは、損害賠償責任の例を2つ紹介します。

 

  • 債務不履行によって生じた損害賠償責任

  • 不法行為によって生じた損害賠償責任

債務不履行によって生じた損害賠償責任

債務不履行による損害賠償請求

債務不履行によって生じた損害賠償責任とは、契約などの約束を守れなかったことにより、相手方に発生した損害の賠償責任のことです。

 

債務不履行には「履行遅滞(りこうちたい):債務の履行が遅れること」「履行不能(りこうふのう):債務の履行ができないこと」「不完全履行(ふかんぜんりこう):債務の履行が不完全であること」の3つの種類があります。

 

例えば、債務不履行に該当するのは以下のようなケースです。

 

  • 借金をしていたが、決められた期限までに返済できなかった(履行遅滞)

  • 1点ものの絵画や骨董品を破損し、期限までに引き渡すことができなくなった(履行不能)

  • 書籍の販売を行ったが、一部にページの抜け落ち(落丁)が存在した(不完全履行)

 

履行遅滞、履行不能、不完全履行などの債務不履行による損害賠償責任は自己破産を行うと原則として免責され、支払い義務がなくなります

不法行為によって生じた損害賠償責任

不法行為による損害賠償責任は免責されないケース有

不法行為による損害賠償責任とは、他人の権利や利益を違法(法律違反)な行為により侵害して損害を与えたことによる損害賠償請求権です。

 

例えば、以下のようなケースが不法行為による損害賠償責任に該当します。

 

  • 配偶者から請求された不貞行為に基づく慰謝料の損害賠償責任

  • スポーツをしていて相手にけがをさせてしまった場合の損害賠償責任

  • 痴漢行為や暴力行為などがあった場合の相手方への損害賠償責任

 

不法行為によって生じた損害賠償責任は、債務不履行によって生じた損害賠償責任とは異なり、場合によっては、非免責債権に該当し、支払い義務が免除されない可能性があります

自己破産しても損害賠償責任がなくならないケース

自己破産しても損害賠償責任がなくならないケースは2つあります。

 

  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償責任(破産法第253条1項2号)

  • 故意や重大な過失により、他人の生命や身体を害した場合の損害賠償責任(破産法第253条1項3号)

 

ここでは、それぞれのケースを具体例を挙げながら詳しく解説します。

悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償責任

「積極的な加害の意思」

破産法第253条1項2号では、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は、自己破産を行っても免責されないと規定しています。

 

先ほど説明した「不法行為による損害賠償請求権」の中でも、ここでいう「悪意で加えた不法行為」とは、以下の例のとおり、他人を害しようとする積極的な意図で行われた行為とされています。

(「悪意」は、単なる故意を超えた「積極的な加害の意思」と理解されています。)

 

  • 窃盗・横領・詐欺などを計画し、他者の金銭を奪うような行為

 

こうした不法行為が原因で損害賠償責任を負った場合、自己破産の申し立てを行っても損害賠償の支払い義務は残ります

故意や重大な過失により、他人の生命や身体を害した場合の損害賠償責任

故意・重大な過失で生命身体を害する

故意や重大な過失によって、他人の生命や身体を害した場合の損害賠償責任も免責されません

 

例えば、以下のケースです。

  • 飲酒運転や無免許運転が原因で、歩行者を死傷させてしまった

  • 故意にDVや暴力事件を起こし、相手を死傷させてしまった

 

故意にDVや暴力事件を起こし、相手の生命や身体に危害を加えた場合、自己破産をしても損害賠償責任は残ります。

 

また、飲酒運転や無免許運転、ひき逃げなど、重大な過失が原因で他人を死傷させた場合も、損害賠償の支払いは免責されません

 

ただし、同じ交通事故でも、以下の場合は免責される可能性があります

  • わき見運転など、重大とまではいえない過失で歩行者を死傷させてしまった

  • 飲酒運転や無免許運転が原因で、住宅などの物損事故を起こした

 

ポイントとなるのは、「重大な過失に当たるかどうか」「他人の生命や身体に関わる事故かどうか」です。

 

わき見運転など、重大とまではいえない過失が原因の損害賠償責任や、物損事故の損害賠償責任は、破産手続きによって免責される可能性があります。

免責される損害賠償・残る損害賠償の早見表

同じ「損害賠償」でも、原因によって結論が正反対になります。

 

代表的なものを整理すると次のとおりです。

 

【自己破産で免責される可能性が高いもの】

  • 契約違反(債務不履行)による損害賠償
  • 不貞(不倫)の慰謝料 ※積極的な加害意思とまではいえないため
  • わき見運転など軽い過失による人身事故の賠償
  • 飲酒運転・無免許運転でも、物損のみの事故の賠償

 

【自己破産しても残る(非免責債権)もの】

  • 窃盗・横領・詐欺など悪意の不法行為による賠償(2号)
  • 飲酒運転・無免許運転・ひき逃げで人を死傷させた賠償(3号)
  • 故意のDV・暴力で人を死傷させた賠償(3号)

 

※あくまで一般的な整理です。

個別の事情によって結論が変わることがあります。

損害賠償が残る場合でも、自己破産する意味はある?

「損害賠償が残るなら、破産しても無駄では」と思われがちですが、そうではありません。

非免責債権として残るのはあくまでその損害賠償だけで、消費者金融やカードなど他の借金は免責されます。

 

破産によって他の返済負担が消えるぶん、賠償の支払いに振り向けられる余力が生まれることもあります。

「損害賠償が残るなら破産しても仕方ない」と諦めずに、何が残り何が残らないかを確認しましょう。

(まとめ)自己破産しても一部の損害賠償責任はなくならない!不安な場合は専門家に相談を

自己破産をしても、債務の支払いが免責されないものを「非免責債権」と呼びます。損害賠償責任のうち、非免責債権に該当するものは、破産後も支払い義務がなくなりません。

 

例えば、詐欺や横領によって被害を与えた場合の賠償責任や飲酒運転で人を死傷させたような場合の賠償責任は、破産手続き後も負うことになります。

 

ただし、債務不履行が原因の損害賠償責任は、自己破産すると免責される可能性があります。

自己破産を検討している方や、損害賠償責任が免責されるかどうか知りたい方は、弁護士などの専門家に相談しましょう。

この記事の執筆者

執筆者 司法書士黒川聡史

黒川聡史(司法書士法人黒川事務所 代表司法書士)

東京司法書士会所属:登録番号第4230号

簡裁代理権認定司法書士:法務大臣認定第501067号

行政書士(登録番号第19082582号)

ファイナンシャルプランナー(CFP®:1級FP技能士)

経歴: 平成19年に個人事務所を開業。債務整理を中心に15,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動

著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある

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司法書士法人黒川事務所は、債務整理(任意整理・時効援用)などを専門に扱う司法書士事務所です。これまでに19年以上の実績があり15,000人以上を解決に導きました。

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東京司法書士会所属
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