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自己破産は離婚前にすべき?ポイントをわかりやすく解説

自己破産のタイミングは、離婚前と離婚後のどちらが良いのでしょうか。自己破産のタイミングによっては、必要な手続きや費用が異なる場合があります。

 

また、配偶者の生活への影響も変わってくるため、離婚を先にするか、破産手続きを先にするかをよく考えることが大切です。

 

本記事では、自己破産をすべきタイミングや、離婚前・離婚後に自己破産するときに気を付けたいポイントを解説します。

自己破産と離婚

自己破産は離婚前にすべき?

自己破産は離婚前・離婚後のどちらのタイミングですべきでしょうか。それぞれのメリット・デメリットは以下の表のとおりです。

ここでは解説の便宜上、夫婦のうち財産の多い方が夫、少ない方が妻という家庭のケースで解説します。

◇妻が破産するケース

  メリット デメリット
離婚前に自己破産
  • 手続きが簡単な同時廃止事件として扱われやすくなる
  • 夫の収入等を申告する必要がある

離婚後に自己破産
  • 元夫の協力が通常必要ない
  • 管財事件になる可能性がある

  • 分与財産を裁判所に処分される可能性がある

◇夫が破産するケース

  メリット デメリット
離婚前に自己破産
  • 慰謝料の免責を避けられるケースがある(妻にメリット)
  • 離婚の際に分与できる財産も裁判所に処分される可能性がある

離婚後に自己破産
  • 元妻の生活への影響を抑えられる
  • 財産隠しを疑われる可能性がある

自己破産のタイミングによって、手続きにかかる費用や期間、元配偶者の生活面への影響などが変わってきます。

離婚手続きと破産手続きを並行して進めるのは大変ですが、自分や元配偶者にとってより良い選択をすることが大切です。

 

ここでは、自己破産のタイミング別にみたメリット・デメリットを解説します。

離婚前に自己破産をするとどうなるか

自己破産してから離婚する

離婚前に自己破産する場合、まずは裁判所で破産手続きを行ってから、離婚に向けた話し合いをすることになります。

 

妻が離婚前に自己破産すると、手続きが簡単な同時廃止事件として扱われる可能性が高くなりますが、夫の破産手続きへの協力が必要になります。

離婚前に自己破産するメリット

妻が離婚前に自己破産するメリットは、「同時廃止事件として扱われやすくなる」という点です。

 

破産手続きには、同時廃止事件と管財事件(少額管財事件)の2種類があります。手続きが簡単な同時廃止事件に対して、管財事件は破産管財人の選任が必要で、さらに予納金(裁判所に支払う費用)の支払いも高額です。

 

同時廃止事件

破産者が財産を持たないことが明らかな場合、破産管財人を選任せずに手続きを進めること

管財事件(少額管財事件)

破産管財人を選任し、破産者の財産を処分して借金などの返済に充てること

 

通常の破産手続きは「管財事件」として取り扱われます。

 

例えば、以下の例のように破産する人が一定以上の財産を所有しているか、本人に免責不許可事由がある場合(浪費やギャンブルが原因の借金など)、管財事件に該当します。

  • 債務者に33万円以上の現金がある場合

  • 債務者に20万円以上の換価対象資産がある場合(預貯金、保険の解約返戻金など)

  • 債務者が所有する不動産の被担保債権額が不動産処分価格の1.5倍未満の場合

  • 債務者の資産調査が必要な場合

  • 債務者が法人の場合

  • 債務者が法人の代表者又は個人事業者の場合

  • 債務者の免責調査を経ることが相当な場合

 

管財事件ではなく、同時廃止事件として破産手続きを進めたい場合は離婚前に自己破産の手続きを行いましょう。

 

離婚してから破産手続きを開始すると、慰謝料や財産分与を通じて、破産する人が一定以上の財産を所有することになる可能性があります。

そのため、慰謝料受取りや財産分与前に破産手続きをすることで、手続きが簡単な同時廃止事件として取り扱われる可能性が高くなります。

離婚前に自己破産するデメリット

一方、妻が離婚前に自己破産するデメリットは以下になります。

 

  • 配偶者の収入等を申告する必要がある(自己破産手続きへの協力)

 

破産手続きの開始に当たって、夫の収入や生活状況がわかる書類の提出を求められる場合があります。

 

例えば、夫の預金通帳の写しや給与明細書、賃貸借契約書などです。すでに配偶者と別居していていても、収入を把握するために連絡しなければならないケースがあることを知っておきましょう。

離婚後に自己破産するとどうなるか

離婚してから自己破産する

夫が離婚後に自己破産する場合、元妻の生活面への影響は比較的少なくなります。ただし、管財事件として扱われる可能性が高く、破産手続きに費用や時間がかかります。

 

離婚後に自己破産するメリット・デメリットを解説します。

離婚後に自己破産するメリット

夫が離婚後に自己破産するメリットは、元妻の生活への影響を抑えられる点です。

 

離婚前に自己破産すると、夫婦の共有財産も処分対象になる可能性があります。離婚後に自己破産すれば、すでに財産分与を済ませた上で破産手続きを行うことも可能になるため、夫婦間のトラブルを未然に防止することができます。

 

なお、自己破産を行うタイミングにかかわらず、元配偶者の信用情報に影響が出ることはありません。破産した人の信用情報には事故履歴が記録されますが、元配偶者の信用情報は別々に管理されています。

離婚後に自己破産するデメリット

一方、夫が離婚後に自己破産するデメリットは2点あります。

 

  • 財産隠しを疑われる可能性がある

  • 管財事件になる可能性がある

 

夫が離婚後に自己破産するときに注意したいのが、財産隠しを疑われる可能性です。自己破産の手続きに当たって、裁判所は破産者の資産や負債を調査します。

離婚手続きの段階で、配偶者に必要以上の財産分与を行っている場合、「手元にお金を残すために財産を隠した」「財産の過少申告を行った」とみなされ、自己破産に影響する可能性があります。

 

こうしたリスクがあることから、離婚後に自己破産する場合、破産管財人を選任し、管財事件として取り扱われることが多くなります。

 

管財事件になると、同時廃止事件よりも手続きに費用や時間がかかるため、離婚前に財産分与する場合は、渡しすぎにならないように通常以上に神経を払い、裁判所にきちんと説明する必要があります。

離婚後に自己破産するときのポイント

離婚後に夫が自己破産するときに知っておきたいポイントは4つあります。

 

  • 妻が子を養育する場合、自己破産しても夫は養育費を支払う義務がある

  • 夫に離婚原因がある場合、破産前に約束していても慰謝料の支払いは免責される

  • 自己破産すると財産分与の請求も無効になる

  • 慰謝料請求や財産分与請求が免責されない場合もある

自己破産しても養育費(婚姻費用)を支払う義務がある

自己破産を行っても、子どもの養育費を支払う義務はなくなりません

 

自己破産は、裁判所の決定により、債務の支払いを「免責」される手続きです。しかし、債務の中には自己破産をしても免責されないもの(非免責債権)があります。

 

非免責債権には、養育費や婚姻費用も含まれるため、自己破産を行っても支払い続ける必要があります。

破産前に約束していても慰謝料の支払いは免責される

慰謝料も自己破産で免責される

養育費や婚姻費用と違って、慰謝料の請求権は非免責債権ではありません。

 

そのため、離婚手続きの段階で慰謝料の支払いを約束していても、その後の破産手続きによって請求権が免責されます

 

慰謝料の請求権が免責されないように手続きを進めたい場合は、まず破産手続きを行ってから、離婚手続きを進めましょう。ただし、破産してから離婚する場合でも、慰謝料の請求権が免責されるケースがあります。

 

例えば、配偶者の不貞など、慰謝料請求権の根拠となる行為がすでに発覚している場合です。この場合、離婚手続きが完了していなくても、すでに慰謝料請求権が発生しているとみなされるため、破産手続きの段階で慰謝料請求権が免責されることになります。

自己破産すると財産分与の請求も無効になる

財産分与は自己破産で財産隠し?

財産分与の請求についても、慰謝料の請求権と考え方は同じです。

離婚するときに財産分与について合意があった場合でも、破産手続きによって財産分与の請求権が免責されます。

 

ただし、免責されるのは「請求権(破産債権)」です。離婚手続きの段階ですでに慰謝料や財産分与の支払いを済ませている場合、後で取り消されることはありません

 

なお、慰謝料や財産分与として配偶者に必要以上の金銭を渡している場合、財産隠しとみなされ、裁判所により慰謝料や財産分与が取り消される可能性があります。

慰謝料請求や財産分与請求が免責されない場合もある

不貞行為の慰謝料は免責される

離婚後に自己破産を行っても、慰謝料請求や財産分与請求が免責されない場合もあります。

例えば、配偶者に対してDVを行っていたケースです。

 

破産法第253条によると、以下の例に該当する請求権は、非免責債権とみなされます。

 

  • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

  • 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

 

DVなど、悪意のある行為が原因で発生した慰謝料は、自己破産しても支払い義務が免除されません。

 

ただし、配偶者の不貞に基づく慰謝料は非免責債権とはみなされません。慰謝料請求や財産分与請求が免責されるかどうか不安な場合は、一度弁護士などの専門家に相談してください。

(まとめ)離婚前後に自己破産をするなら専門家に相談しよう

離婚手続きと破産手続きを一緒に行う場合、手続きを進める順番によって配偶者への影響が大きく変わります

 

財産の大きい方が破産する場合、配偶者への影響をなるべく抑えたい場合は、まず離婚をしてから破産手続きを進めましょう。離婚する前に破産手続きをすると、夫婦の共有財産も処分対象になるため、夫婦間のトラブルに発展する可能性があります。

 

一方、財産の少ない方が破産する場合は、離婚をする前に破産手続きをすると、管財事件ではなく、同時廃止事件として扱われる可能性が高くなります。同時廃止事件になった場合、管財事件よりも手数料が安く、比較的短期間で手続きが完了するため、破産手続きの負担を軽減することが可能です。

 

離婚前に自己破産する場合と、離婚後に自己破産する場合のメリット・デメリットを理解した上で手続きを進めていくことが大切です。

自己破産のタイミングについて疑問や悩みがある場合は、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

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