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自己破産するとどうなるのか、不安に感じている方は多いでしょう。
自己破産をすると、原則として借金の支払い義務は免除されます。
一方で、持ち家など一部の財産を失ったり、一定期間クレジットカードやローンが利用できなくなったりする制限があります。
しかし、戸籍に記録される、仕事を失う、家族に借金が移るといったことはありません。
この記事では、自己破産をすると実際に何が起きるのか、借金・財産・家族・仕事への影響、デメリットと制約、そしてよくある誤解までを、司法書士の視点で整理します。
この記事を読んでわかること
自己破産は、破産法という法律にもとづいて、裁判所に「支払いができない」と認めてもらい、借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。
返せなくなった借金を一度リセットし、生活を立て直すために国が用意した制度であって、けっして「人生の終わり」を意味するものではありません。
自己破産ができるのは、収入や財産に対して借金が大きすぎて、返済を続けられない「支払不能」の状態にある方です。
借金の金額に明確な下限はなく、収入・財産・借金額のバランスで判断されます。
自己破産は、財産を清算する「破産手続」と、残った借金の支払い義務を免除してもらう「免責手続」の2つからできています。
多くの方にとって本当のゴールは後者の「免責」で、これが確定して初めて借金の支払い義務がなくなります。
細かい説明に入る前に、何にどう影響し、何には影響しないのかを一覧にまとめます。
| 自己破産の影響まとめ | |
|---|---|
| 借金・負債 | 原則すべて免除される(税金など一部の例外を除く) |
| 現金 | 99万円までは手元に残せる |
| 預貯金・車・保険など | 1品目あたり時価20万円が処分の目安 |
| 持ち家 | 原則手放すことになる |
| 退職金 | 在職中なら見込額の8分の1相当が財産として扱われることがある |
| 保証人 | 保証人に請求がいく |
| 信用情報 | 事故情報が登録され、約5〜7年は新規の借入・カードが難しい |
| 官報 | 氏名・住所が掲載される |
| 職業・資格 | 手続き中のみ一部の職業・資格に制限 |
| 年金・生活保護 | 影響しない |
| 選挙権 | 失わない |
| 戸籍・住民票・パスポート | 記載されない |
| 家族 | 保証人でなければ原則影響しない |
自己破産には財産の処分や信用情報への登録などのデメリットがあります。
しかし、借金の返済に追われて生活が立ち行かなくなっている方にとっては、それ以上に大きなメリットがあります。
ここでは、自己破産によって得られる主なメリットを見ていきましょう。
自己破産の最大の効果は、借金の支払い義務がなくなることです。
消費者金融のキャッシング、クレジットカード、カードローン、住宅ローン、奨学金など、ほぼすべての借金が対象になります。
さらに、借金以外の次のような負債も基本的に支払い不要になります。
免責が確定すれば、これらを今後一切払う必要はありません。
専門家に依頼して「受任通知」が貸金業者に届くと、その時点で督促や取り立てが止まります。
給料や預金の差押え(強制執行)も、破産手続の中で止まったり効力を失ったりします。
生活に必要な家財道具や、一定額までの現金・財産は手元に残せます。
自己破産で免責を受けても、例外的に支払い義務が残るものがあります。
これを「非免責債権」といいます。
故意や重大な過失により、他人の生命や身体を害した場合の損害賠償責任
特に税金・健康保険料・年金保険料の滞納は、自己破産をしても残ります。これらが多い方は、破産後の生活設計に必ず織り込んでおく必要があります。
養育費や婚姻費用も免除されないため、支払いが苦しい場合は家庭裁判所の減額調停を検討します。
逆にいえば、こうした一部の例外に当てはまらない限り、ほとんどの方は「すべての借金が免除される」ことになります。
自己破産で失うのは、すべての財産ではなく「価値の高い財産」だけです。
具体的には、99万円を超える現金や、処分時に20万円を超える価値のある財産が対象です。
預貯金・保険の解約返戻金・株式・車なども、1品目あたりの時価が20万円以下なら手元に残せます。
持ち家がある場合は、ほぼ確実に手放すことになります。車もローンに「所有権留保」が付いていると債権者に引き上げられます。
限度を超える財産は破産管財人が換価し、債権者への配当に充てられ、それでも残った借金が免除されます。
免除されるのは破産した本人だけです。
保証人・連帯保証人が付いた借金(奨学金や一部の自動車ローンなどに多い)があると、自己破産によってその請求が保証人へ回ります。
保証人に迷惑をかけたくない場合は、その債務を対象から外せる任意整理を検討する必要があります。
自己破産をすると信用情報機関(JICC・CIC・KSC)に事故情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト」の状態になります。
この間はクレジットカードの新規発行やローンの利用が難しくなりますが、一生ではありません。
おおむね5〜7年でこの情報は消え、また借入ができる状態に戻ります。
なお、これは自己破産だけの不利益ではありません。
任意整理や個人再生でも、また借金を長期滞納しただけでも同じように事故情報は登録されます。
自己破産を考える段階ではすでに信用情報が悪化していることがほとんどで、「今さらブラックを恐れる必要はない」という方は多いです。
破産手続の開始決定から免責の確定までの間、一定の職業・資格が制限されます。
たとえば警備員、生命保険募集人、宅地建物取引士、士業(弁護士・司法書士・税理士など)、後見人などです。
ただしこれは手続き中だけの一時的な制限で、免責が確定すれば元に戻ります(復権)。多くの会社員・公務員の仕事には影響しません。
自己破産を理由に会社を解雇されることは、原則としてありません。
労働基準法では、自己破産したこと自体を理由に解雇することは認められていません。
また、多くの会社員は自己破産をしても勤務先に報告する義務はなく、会社に知られずに手続きを終えるケースも少なくありません。
ただし、勤務先から借入れをしている場合や、退職金見込額証明書の取得が必要な場合には、手続きの過程で会社に知られる可能性があります。
管財事件になると、手続き中の引っ越しや長期の旅行・出張・海外旅行に、裁判所の許可が必要になることがあります。
禁止されるわけではなく、必要があれば許可を得て移動できます。
これも手続きが終われば一切なくなります。
自己破産をすると、政府発行の「官報」に氏名・住所などが2回ほど掲載されます。
人に見られて破産を知られる心配をされる方もいますが、官報を日常的に読んでいる人はごくわずかで、膨大な情報の中から知人に見つけられる可能性は低いのが実情です。
今すぐ退職する予定がなくても、在職中の場合は「今退職したら受け取れる退職金見込額」の8分の1相当額が、20万円を超えると財産として扱われ、その分を用意する必要が出ることがあります。
実際に退職するわけではないので、積み立てて分割で納める対応が認められることもあります。
今住んでいる賃貸を自己破産で追い出されることはありません。
ただ、新たに部屋を借りる際、家賃保証会社が信販系(信用情報を照会するタイプ)だと、事故情報が残る間は審査に通りにくいことがあります。
その場合は、信用情報を見ないタイプの保証会社や、連帯保証人を立てられる物件を選ぶといった方法があります。
自己破産をしても、携帯電話やスマホが必ず使えなくなるわけではありません。
利用料金の滞納がなく、端末代金の分割払いも終わっている場合は、そのまま利用を継続できます。
一方で、利用料金やキャリア決済の未払いがある場合や、端末代金の分割払いが残っている場合には、自己破産の手続きに加えるため契約が解約されます。
ただし、自己破産後であっても回線契約そのものは可能です。
端末を一括購入したり、中古端末やSIMフリー端末を利用したりすれば、問題なくスマホを利用できます。
なお、信用情報に事故情報が登録されている間は、端末代金の分割購入が難しくなる点には注意が必要です。
世間のイメージで「できなくなる」と思われがちですが、実際には影響しないことを整理します。
「家族や周囲に必ず知られる」「もう普通の生活はできない」というのは、ほとんどが誤解です。周囲に知られずに手続きを終える方が大勢いらっしゃいます。
自己破産はデメリットがないということはありませんが、自己破産を検討する段階においては、実質的にデメリットがないと感じられる状況になっていることが多いです。
例えば、自己破産には信用情報への影響や財産の処分、資格制限などのデメリットがあります。
しかし、自己破産を考える時点では、すでに多重債務に陥り、返済が困難な状態にあるため、信用情報は既に悪化していることが多く、財産もすでに処分しており限られている場合が多いです。
また、資格制限も限定的であり、多くの職業には影響しません。
このような状況では、自己破産を行うことで得られる借金の免除というメリットが、デメリットを大きく上回ります。
結果として、自己破産を検討する段階では、実質的にデメリットがないと言えるケースも多いのも事実です。
自己破産の最大のデメリットは、実際の制約そのものよりも「世間のイメージ」かもしれません。
自己破産に対しては、「人生の終わり」「社会的に信用を失う」「普通の生活ができなくなる」といった強いマイナスイメージを持たれることがあります。
しかし実際には、自己破産は返済不能となった方が生活を立て直すために法律で認められた制度です。
裁判所の監督のもとで厳格な審査が行われ、高額な財産の処分や一定の制約を受ける代わりに、借金の支払い義務が免除されます。
自己破産は責任から逃げるための制度ではなく、返済できなくなった借金を整理し、生活を再建するための再スタートの制度です。
実際に手続きを終えた多くの方が、借金の悩みから解放され、新たな生活をスタートしています。
自己破産を考えている場合、手続き前の行動によっては免責が認められなくなるリスクがあります。
良かれと思って行ったことが問題視されるケースもあるため注意が必要です。
ここでは、自己破産の前に絶対に避けるべき行為を解説します。
財産を隠したり、破産前に家族へ名義を移したりするのは絶対にやめてください。
財産隠しは免責不許可事由にあたり、借金が帳消しにならない原因になります。悪質な場合は詐欺破産罪に問われ、刑事罰の対象にもなります。
「お世話になった人にだけは返したい」「自己破産をすることを知られたくない」と、特定の債権者や友人・親族にだけ返済するのもいけません。
すべての債権者を平等に扱う原則に反する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」とされ、問題視されます。
自己破産を前提として新たに借入れをしたり、クレジットカードを使って現金を作ったりする行為は避けなければなりません。
返済する意思や能力がないにもかかわらず借入れをすると、詐欺的な借入れと判断される可能性があります。
また、クレジットカードのショッピング枠を利用して商品を購入し、それを換金して現金化する行為も問題視されます。
これらは免責不許可事由に該当する可能性があり、裁判所の免責の判断に悪影響を与えるおそれがあります。
自己破産を検討しているにもかかわらず、パチンコ・競馬・競輪・オンラインカジノなどのギャンブルを続けることは避けるべきです。
ギャンブルによる浪費は免責不許可事由のひとつとされています。
実務上は免責が認められるケースも多いですが、手続き開始後もギャンブルを続けていると反省がないと判断される可能性があります。
自己破産を検討している段階で、株式投資やFX、暗号資産取引などのハイリスクな投資を続けることもおすすめできません。
借金を取り戻そうとして大きな勝負に出る方もいますが、損失が拡大して状況がさらに悪化するケースが少なくありません。
また、投機的な取引による多額の損失は、裁判所から詳しい説明を求められる原因にもなります。
財産や借金について、裁判所にうそをつくことは絶対にいけません。
持っている財産を申告しない、債権者一覧表からわざと特定の借入を外す、収入を偽る、こうした虚偽の申告は免責不許可事由にあたります。
「知られたくない借入がある」「この財産は残したい」という気持ちは分かります。ですが、隠した財産や債権者が後から発覚すると、免責が認められないばかりか、悪質と判断されれば詐欺破産罪として刑事罰の対象にもなります。
おおまかには、以下の流れで進みます。
(1) 専門家へ相談・依頼
(2) 受任通知の送付で取り立てが止まる
(3) 書類・財産の調査と申立書の準備
(4) 裁判所へ申立て
(5) 破産手続開始決定(同時廃止か管財かが決まる)
(6) 管財事件なら管財人の調査・債権者集会
(7) 免責許可決定・確定
・同時廃止 … おおむね3〜6か月
・管財事件 … おおむね6か月〜1年程度
自己破産の費用は、「裁判所に納める実費」と「専門家に払う報酬」に分かれます。
【裁判所費用(実費)】
同時廃止なら収入印紙・官報公告費など合計1〜3万円程度です。
管財事件になると、これに加えて管財人に納める予納金が必要です。
予納金は、弁護士が代理人として申し立てる「少額管財」なら20万円程度ですが、この運用は弁護士が代理人であることを前提とします。
司法書士が関与した、書類作成のみの場合は通常管財として50万円程度を求められることがあります。
【専門家報酬】
事務所によりますが、おおむね30万〜50万円程度が目安です。
多くの事務所が分割払いに対応しています。
なお、費用を用意できない方向けに、法テラス(日本司法支援センター)の立替制度を利用できる場合があります。
自己破産は借金問題を根本的に解決できる方法ですが、唯一の方法ではありません。
次のような事情があるなら、ほかの手続きで解決できることがあります
個人再生なら、職業・資格の制限がなく、財産の処分も避けられます(住宅ローン特則を使えば自宅も残せます)。
警備員や保険・不動産関係などで資格制限が困る方、持ち家を残したい方は、個人再生が向いていることがあります。
ただし、清算価値保障原則により、持っている財産の総額以上は返済する必要があります。
任意整理なら、裁判所を使わないため官報に載らず、整理する債権者を選べます。
保証人付きの借金や残したい車のローンを対象から外せるため、保証人に迷惑をかけたくない方に向いています。
どの方法が最適かは、借金の総額・収入・財産・保証人の有無によって変わります。自己破産を含め、一人ひとり最適な方法は異なります。
| 自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
|---|---|---|---|
| 借金減額 | 100% | 約80% | 利息のみ |
| 持ち家 | 残せない | 残せる | 残せる |
| 官報 | 載る | 載る | 載らない |
| 資格制限 | あり | なし | なし |
自己破産を検討している方からは、「本当に会社に知られないのか」「家族への影響はないのか」など、さまざまな質問をいただきます。
ここでは、自己破産について特によく寄せられる質問と回答をまとめました。
できます。
ただし、前回の免責許可の確定から7年が経過していることが原則の条件です。7年以内の場合は、よほどの事情がない限り免責が認められにくくなります。
できます。
収入がないことは自己破産の妨げになりません。むしろ返済能力がないことは支払不能の判断材料になります。
多くの場合、勤務先に知られずに手続きできます。
ただし、勤務先からの借入れがある場合や、退職金見込額の証明を会社に依頼する場合などは、事情に応じた配慮が必要です。
別居の家族には内緒でできますが、同居している配偶者や親には内緒で手続きすることは難しいです。
同居している場合は、家族の給料明細などの収入証明書や家計全体の家計簿を裁判所に提出するため協力が必要になるからです。
すべての銀行口座が凍結されるわけではありません。
借入れやカードローンがある銀行で自己破産を行う場合、その銀行の口座は一時的に凍結されることがあります。
これは銀行が預金と借金を相殺するためです。
一方、借入れのない銀行口座であれば通常どおり利用できます。
原則、退去させられることはありません。
家賃をきちんと支払っている限り、自己破産したことだけを理由に賃貸借契約を解除できません。
ただし、おおむね3か月以上の家賃の滞納がある場合は、自己破産とは関係なく契約解除や明渡請求を受ける可能性があります。
自己破産後でも携帯電話の契約は可能です。
ただし、端末代金を分割払いで購入する場合には信用情報が確認されるため、約5〜7年は審査に通りにくくなります。
そのため、中古端末やSIMフリー端末を用意し、回線契約のみを行う方法が現実的です。
利用料金の未払いを自己破産で整理した場合でも、回線契約自体はできるケースが多いため、「一生スマホを契約できなくなる」ということはありません。
使えなくなりません。
自己破産の影響を受けるのは、あくまでも破産した本人の信用情報です。
配偶者や親、子どもなど家族名義のクレジットカードやローンには原則として影響しません。
そのため、家族が契約しているクレジットカードが停止されたり、家族の信用情報に事故情報が登録されたりすることはありません。
黒川聡史(司法書士法人黒川事務所 代表司法書士)
東京司法書士会所属:登録番号第4230号
簡裁代理権認定司法書士:法務大臣認定第501067号
行政書士(登録番号第19082582号)
ファイナンシャルプランナー(CFP®:1級FP技能士)
経歴: 平成19年に個人事務所を開業。債務整理を中心に15,000人以上の依頼者を解決。現在は事務所を法人化して活動
著書に『借金の不安が楽になるお金の話』『FPに知ってほしい借金の話』がある
司法書士法人黒川事務所は、債務整理(任意整理・時効援用)などを専門に扱う司法書士事務所です。これまでに19年以上の実績があり15,000人以上を解決に導きました。
企業理念は『あなたの借金問題解決を低料金でサポートしたい!』です。
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